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日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

脳はいかに意識をつくるのか/ゲオルグ・ノルトフ



★★★★★

ついに「意識」「自己」が自然科学の領域に入ってきました

久しぶりに読み応えのある自然科学の本に出合うことができました。

本書は、神経科学者・哲学者・精神科医という、
脳と心についての3大領域を一人で兼ねている著者によるものです。

これまでの脳と心の研究については、これらの各領域がバラバラに活動していたため、
それぞれの領域での目的・手法に制約された命題・仮説・検証が繰り返されてきていました。
しかし、脳と心についての真の研究と解明のためには、
これらの領域を横断したうえで、それぞれの知見が統合されることが不可欠なのですが、
これまでそのような試みはなかなかなされず、また上手くいっていませんでした。

また、脳科学・神経科学に限ってみても、
「意識」「自己」については、なかなか上手く踏み込むことはできず、
これらの用語を冠する書籍でも、踏み込みが浅かったり、周辺領域に留まったり、問題をすり替えたりという状況でした。
更に、「意識」「自己」について、
脳の特定領域に還元できず、還元できなくなると複雑系理論の創発性でごまかしたりしていました。
そして、自然科学の性ではあるのですが、
客観性を担保するために「意識」「自己」が本来持つ主観性を軽視・無視してきました。


本書は、上記のように神経科学・哲学・精神科医のタイトルを有する著者が、
それぞれの領域の知見を活かしながら領域横断的に取り組み、これらの領域を統合させています。
また、脳科学・神経科学の上記のようなこれまでの研究とは異なり、
真正面から主観的な「意識」「自己」について、踏み込んでいます。


超要約すると、
「意識」「自己」は、
脳内にある(ので脳とは別に「心」という概念を設定する必要はない。「心脳問題」は的外れ)
脳内の特定の場所に還元できるのではなく、遺伝子-脳-世界との関係・バランスから生じる
脳の表層的な機能ではなく、脳の基盤的な機能である「安静時脳活動」と深くかかわっている
脳内に時間と空間をつかさどるシステムがあり、それがアイデンティティ(1つの連続した自己)を生み出す
(もっと深く何度も読み込めば、もっとまともな要約ができると思いますので、再読を繰り返して精査していく予定です)

素晴らしいことに、著者の本書によって、ついに「意識」「自己」が自然科学の領域に本格的に入ってきました。

一方で、本書内で「未解明」とされる命題が少なくありませんが、
これは著者が誠実な科学者であることの証だと思っています。
少なくとも持論に浮かれて仮説レベルのものを事実と断定してしまう科学者よりはよほど誠実です。

なお、本書では「意識」「自己」の解明のために、うつ病、統合失調症の症例を詳しく説明しています。
いずれの疾患も本書を読むことで、理解が深まりました。
ですので、「意識」「自己」の自然科学での知見に興味のない方でも、
これらの疾患に感心がある方は、読まれるとよいのではないかと思います。

世の中では、これらの疾患に対する誤解や偏見、差別が少なくありませんし、
誰がいつこれらの疾患にかかってもおかしくありませんので、
正しい知識は得ておいた方がよいのではないかと思います。

また、すでにこれらの疾患にかかっておられる方も、
読書ができる状態であれば、一読されることをお勧めします。
ただし、容易に読める本ではありませんので、
読書ができるような状態でない方は、無理して読まないでください。
知識を得るよりも症状を悪化させない方が遥かに重要ですので。
  1. 2017/04/01(土) 21:17:11|
  2. 脳科学・神経科学
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誇りある日本の復活を望む一日本人

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このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

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