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Rising Sun

Author:Rising Sun
日本を愛するリヴァタリアン
倉山塾生・江崎塾生

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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なぜ経済予測は間違えるのか?/デイヴィッド・オレル



★★★★★

役に立つ新しい経済学への変革の提言

経済学の書籍を何冊も読んだ印象として、経済学は科学というよりイデオロギーだと思うようになりました。
その中で、中立を装いながら特定のイデオロギーに誘導するような書籍に何冊も出会いました。
また、経済学が科学を装うために、無理矢理ニュートン物理学の真似をしているという話も読みました。
さらに、新しい考え方(複雑系)などを経済学に取り入れようとすると、大きな反発を招くという話も読みました。

最近、行動経済学が登場し、修正されつつあるものの、本質的な部分の抜本的な変革には繋がっていないように思えます。

ただ、それでは経済学はどうあるべきか、どうすべきか、について整理された本をこれまで見受けませんでした。
本書は、これらについて本格的にメスを入れた初めての本ではないかと思います(私の知り得る限りですが)。

ネイチャー誌に載った「経済学は科学革命を必要とする」という記事の、
「私たちは古典的な経済学と手を切り、まったく別の道具を開発する必要がある」
という提言を受けて本書は書かれています。

まず、新古典派経済学の基本中の基本である、需要供給曲線を否定します。
この曲線はニュートン物理学を真似て作られているため、還元主義をベースとし、不変要素があることを前提としています。
しかし、実際の経済は気象と同様、様々な要素(社会的因子・経済的因子・心理的因子)が複雑に絡まっており、
単純な法則に還元することはできないため、創発的現象として経済を捉えるべきだとしています。
そのうえで、代替案として複雑系理論の活用を提言しています。

以降、様々な歴史や大きな出来事などを踏まえながら、以下のような考察・提言をしています。
(もう少し詳しいレビューは追記をご覧ください)

新古典派経済学そのものの変革

・効率的市場仮説の否定と、代替案としてネットワーク理論の活用の提言
・経済は市場の「見えざる手」で安定しているという思い込みの否定と、代替案として非線形理論・制御理論の活用の提言
・合理的経済人という概念の否定と、エージェントベースモデルのシミュレーションに基づく研究の提言
・主流の経済理論の偏った思考様式の否定と、上記で提言した内容の再提言
・経済は本来的に公平で均衡しているという神話の否定と、公平・均衡を取り戻すある程度の規制の導入の提言
(権力とコネを持つ一握りの個人・組織が、自己利益の追求のために数多くの他者を犠牲にすることを制限する規制)

経済学を取り巻く外部世界との調和

・生態系を無視した経済学の否定と、生態系の一部として経済を位置づけることの提言
(但し、環境経済学は新古典派経済学のうえに成り立っているため問題を抱えているとのこと)
・幸福について誤った定義をしている経済学の否定と、幸福のために社会的規範に経済的規範を従属させることの提言

本書の総括と変革の方向性

・歴史のある時期の特有のイデオロギーである経済学から、21世紀の知識と技術に基づく経済学へ
(ネットワーク理論、複雑系理論、非線形理論といった応用数学の活用)
・経済を惰性的な機械として扱う経済学から、経済を一種の生命体として扱う経済学へ
(モデルも手法も、システム生物学、生態学、医学といった生命科学用に開発されたものを活用)
・バリバリの方程式と数に執着した経済学から、もっと細やかな多面的な進め方ができる経済学へ
・学部内に閉じこもった経済学から、幅広い人々の洞察が利用される経済学へ
(環境保護派、フェミニスト、心理学者、政治学者など)


簡単に要約すると、
新古典派経済学は、経済の実態とは乖離しており役に立たない。そればかりか弊害をももたらす。
従って、経済の実態をより上手く反映できる、経済の外部世界とも調和した複雑系経済学を構築・活用すべきである。
となります。

記憶に新しいリーマンショックに関連した事例を幾つも活用して論じているため、提言に真に迫るものがあると思えました。
また、環境や幸福など最近話題のテーマを経済学と絡めて論じているため、提言が身近に感じられました。


本書で提言された内容や、経済学者でない者が経済学変革の本を出すことに、
不満・怒りを抱く経済学者は少なくないと思います。

しかし、P・F・ドラッカーも言うように、えてしてイノベーションは外側からやってきます。

本書がベストな提言かどうかはわかりませんが、
外側からの提言であっても、経済学者の方々は真剣に検討する必要はあると思います。


なお、本書では複雑系理論の要素が沢山出てきます。
多少なりとも複雑系理論を知らないと訳がわからなくなるかもしれません。
入門レベルの書籍を挙げておきますので、ご参照ください。

今野紀雄『図解雑学 複雑系

更に詳しく知りたい方には、以下もお勧めです。

複雑系:M・ミッチェル・ワールドロップ『複雑系
べき乗則:マーク・ブキャナン『歴史の方程式
ネットワーク理論:アルバート・ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考
エージェントベースモデル:ジョシュア・M・エプステイン&ロバート・アクステル『人工社会

また、複雑系経済学の書籍は1冊しか読んでいませんが、こちらも挙げておきます。

W・ブライアン・アーサー『収益逓増と経路依存

なお、他の書籍(著者・タイトルは忘れましたが)で、
上記著者が経済学の世界では複雑系の考えはほとんど受け入れてもらえない、とコメントしていました。


新古典派経済学そのものの変革

効率的市場仮説を否定します。
これは、市場で活動する人々の間では相互作用はないとする説です。従って群集心理も認めていません。
また市場に突然の変化があることを想定していません(ランダムな小さな変化しか認めていません)。
しかし、実際の市場は、人々が相互作用し、群集心理に乗せられ、またバブルが起き、はじけます。
そのうえで、代替案としてネットワーク理論の活用を提言しています。
実際に人々が相互作用している(ネットワーク化されている)ので、それに相応しい理論を当てはめればよいということです。

経済は市場の「見えざる手」によって安定しているという思い込みを否定します。
(完全な安定は前提としていませんが、不安定の影響は相対的影響は小さく、実際上無視でき、作用は遅いとされている)
経済が安定しているという前提は、19世紀の数学では、この前提がないと方程式が解けなかったからだとしています。
また、安定しているという前提を守ったほうが、エコノミストにとって都合がいいらしいとしています。
しかし、実際には全く安定しておらず、常に変化しています。
そのうえで、代替案として非線形理論・制御理論の活用を提言しています。
これについてはすでに経済学界に専門の学会・学術誌が登場しているとのことです。

経済リスクの管理のベースとして使われている正規分布を否定しています。
正規分布は単純で使いやすいため利用されているが、実際の価格変動は正規分布に従っていないこと提示しています。
そのため正規分布に基づくリスク管理は間違った安心感を与えてしまうとして、警鐘を鳴らしています。
そのうえで、代替案として実際の価格変動がよって立つべき乗則を踏まえたリスク管理の開発・実践を提言しています。

合理的経済人(人は何でも知っていて、何でも計算でき、常に合理的な判断をする)という概念を否定しています。
エコノミスト以外の人なら誰でもこれが間違っていると思うはずです。
(他の本で、エコノミストですら自身の買い物などの判断では、合理的経済人でないことは理解していると書かれていました)
合理的経済人に基づくモデルは経済予測できないだけでなく、管理が可能という誤った幻想をもたらすと危惧しています。
そのうえで、代替案として人間の正しい理解(感情やバイアスがあるなど)に基づく理論構築と、
(これは、未だ主流ではないようですが、行動経済学や神経系在学が担っていくでしょう)
エージェントベースモデルのシミュレーションに基づく研究を提言しています。
(幾つかの特徴を持たせたエージェントを作り、様々な状況下で、エージェントがどう動き、どんな結果となるかを試すこと)

主流の経済理論の思考様式が、経済システムの均衡を回復する主な障害になっているとして否定しています。
この思考様式は、複雑なものを単純な法則に、人間の動機を冷厳な計算に還元するという偏ったものだとしています。
また、経済は方程式で制御できる、個人や世帯は群衆行動には陥らない、未来は過去と似ている、などの、
誤った神話を生み出している、としています。
そして、これらの神話を拡げ続けることで、大学・ビジネススクールは未来の金融危機の種を蒔いている、としています。
そのうえで、代替案として既に挙げられた、複雑系理論・ネットワーク理論・非線形理論の活用を再度提示しています。

経済学の最大の神話である「経済は本来的に公平で均衡しているという考え」を否定しています。
これは19世紀の終わりに経済学が数学化されるようになった頃、道具の制約上やむを得ずこうなっただけとしています。
それが、様々な過程を経て神話になっていったようです。
また、周辺での小さな改善(限定合理性など)が多く行われたが、それが中核となる神話を温存させたとしています。
しかし、所得格差の拡大などの現象を示して、実際には公平でもなく均衡もしていないことを明らかにしています。
(アメリカの巨大企業のCEOと一般社員の報酬の格差が2007年には500対1だとのこと)
またこの考えが、平均的な労働者を犠牲にして大企業が利益を得る目的で使われたとしています(規制緩和など)。
そのうえで、代替案としてある程度の規制(累進課税・賃金調整・企業構造・社会政策)の導入を提言しています。
規制は自由市場を歪めますが、公平・均衡のない自由市場で生まれた米国金融企業ほどの歪みではないとしています。
そして、現実の世界に存在する権力や影響力の膨大な格差を認め、均衡を取り戻す方法を示す経済理論や世界観が、
絶対の前提条件であるとしています。


経済学を取り巻く外部世界との調和

生態系を無視した主流の経済学を否定しています。
経済は本来生態系の一部であり、
経済の外から天然資源やエネルギーをインプットし、汚染や廃棄物を経済の外にアウトプットしていますが、
新古典派経済学ではこれらのことを完全に無視しているとのことです。
新古典派のイデオロギーと抑制のない市場メカニズムが安全に未来へ導くという信仰が、
環境危機を解決する上での最大の障害だとしています。
また、新古典派経済学では時間の作用を無視するので、将来世代の権利も無視しているということです。
これらを踏まえた指標の筆頭がGDPですが、
成長の負の影響を無視するので、誤って経済が健全な状態にあるという印象を生むことが懸念されています。
そのうえで、新たな指標として、
ブータンの国民総幸福、持続可能経済福祉指標(ISEW)、真正進歩指標(GPI)を挙げています。
これらの指標が仮に曖昧で多次元的なものであるとすれば、現実もそうだからだということになり、問題ないとしています。
そのうえで、代替案として上記で挙げた弊害をなくす、生態経済学を支持しています。
(炭素税やキャップ・アンド・トレードなどの方策で、生態系と経済を共生させる)

なお生態系在学に似ていると思われるものに環境経済学があります。
但し、こちらは市場に判断させるか、消費者の選択から価格を推定ため、新古典派経済学に他ならないとしています。

幸福について誤った定義をしている経済学を否定しています。
ヴィクトリア時代の経済学の創始者によれば、経済成長の主な目的は人を幸せにすることだったようです。
しかし、物質的に豊かになっている国々では、幸福度はわずかではあるが下がっており、
物質的に豊かではない国々のほうが、もっと豊かな国々よりも幸福度が高いようです。
これは幸福に値段をつけることができない、幸福はお金では替えないという限界をもつ経済が、
最優先順位を与えられているからだとしています。
人間は社会的なやりとりで規定される世界(社会的規範)と市場でのやりとりで規定される世界(市場的規範)という、
2つの世界で暮らしています。
幸福は社会的で心理的な現実によって決まるのであり、市場的規範に執着しても幸福は得られないのですが、
物質的成功が幸福であると信じ込まされてきた人々は簡単に市場的規範になだれ込んでしまいます。
更に市場的規範に染まることで、自らを歪めて合理的経済人になろうとしているようだとしています。
また市場において幸福を求めて競争しているという考え方こそが、人々を不幸にしているとしています。
そのため、人々の幸福のために、成長の定義を変えることが必要であるとしています。
(不平等の緩和、経済の安定化、無給の活動の正当な評価、金銭と幸福が全く別次元であることの認識)
そのうえで、代替案として、上手くいっている社会について、金銭や物質的所有が従属的な役割を演じる新たなモデルの構築を提言しています。
そして、これを阻む主な障害は新古典派のイデオロギーだとしています。
新古典派のイデオロギーが学校で教えられ、企業や組織で虚構を繰り返すことが理由として挙げられています。

今の経済理論は科学というより、歴史のある時期に特有のイデオロギーであり、
そろそろ終わりを迎えつつあるのではないか、としています。
現在の危機(経済危機や環境破壊など)に対処するためには、
21世紀の知識と技術に基づいて、代替案を立てることが必要であり、
ネットワーク理論、複雑系理論、非線形理論といった応用数学から想をえることができるとしています。
また新理論は、経済を惰性的な機械ではなく、一種の生命体として扱う必要があり、
モデルも手法も、システム生物学、生態学、医学といった生命科学用に開発されたものと似たものになるとしています。
そして経済を生命体として扱えば、「価格は正しい」という論理よりも、倫理を考慮に入れる必要があるとしています。
さらに新理論は、バリバリの方程式と数への執着を緩め、もっと細やかな多面的な進め方が採用されるとしています。
あと環境保護派、フェミニスト、心理学者、政治学者などを含む幅広い人々の洞察が利用されるとしています。

最後に、このようなことを含めた新しい経済学が必要であると、総括しています。

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