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Rising Sun

Author:Rising Sun
日本を愛するリヴァタリアン
倉山塾生・江崎塾生

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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心は遺伝子の論理で決まるのか/キース・E・スタノヴィッチ



★★★

人間科学全般における認知科学の位置づけへの試み

リチャード・ドーキンスやダニエル・デネット、スティーブン・ピンカー等の提唱する進化理論・遺伝学に基づく人間の本性を前提としたうえで、著者の専門領域である認知科学をどのように位置づけるのが適切か、を解説した本です。

人間を取り巻く2種類の利己的な複製子である遺伝子とミーム(様々な情報、文化や宗教を含む)の利益に囚われずに、人間個人として利益を得るためには、認知科学が領域とする合理的な思考を働かせることが大事である、と解いています。

また、その合理的な思考も既に決まったことを効率的に行うための合理的思考(IQテストに代表されるようなもの)だけでなく、何が重要か・そもそも何をすべきか、といった価値観を考えるための合理的な思考が大事であり、後者は巷ではあまりにも軽視されていることから、これらを積極的に養っていくことが大事だとしています。

人間科学全般における認知科学の位置づけとしては、大枠としては納得できる内容となっています。


但し、認知科学の重要性を強調したいあまり(著者も認識していますが)、進化心理学等の他の領域を軽視したり矮小化したりする表現が随所に現れており、このあたりは注意する必要があるでしょう。

また、利己的な遺伝子の目的を生殖だけに限定しすぎており(これ自体は重要な目的ですが)、生殖のための個体の生存・維持・競争や、子孫への愛情・育成等、それに向けた活動についてはあまり触れられておらず、どこまで遺伝子由来の活動に個体を委ねるのが適切なのか、どこからが委ねるべきでないのか、についてはほとんど触れられておらず、認知科学と進化心理学との具体的な境界に対する説明がありません。

更に、情動や感情等、人間が無意識かつ制御できないものについての解説がほとんどないため、これらの重要性が認識されないまま合理的思考の重要性を訴えていますので、感情と思考との葛藤についての解説や、葛藤から生じるストレスの大きさについても解説されていません。感情心理学やそれを裏付けるアントニオ・ダマシオやジョセフ・ルドゥー等が研究している脳科学をもっと取り込む必要があるでしょう。


とはいえ、どの学問領域でもそうなのですが、研究者自身が身を置く領域を超えて諸領域を統合したり、関連付けたりする学者はそれほど多くはないですので、本書は上述した部分はありつつも、有益な書籍だと思います。


なお、本書で登場する様々な人間科学の学問領域について、著者はそれなりにわかりやすく書いてはいますが、それでもそれらの領域について接点のない方には理解するのが容易ではないと思います。従って、上述した学者の書籍を読まれてから本書を読むことをお薦めします。


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