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伝統・科学・世界を知りマネジメントに活かす

日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

生存する脳/アントニオ・R・ダマシオ



★★★★★

意思決定(推論・決断)における情動と感情の役割

西洋では、デカルトの二元論に基づく人間の探究の歴史が相当長いようで、心理学や脳科学においても、理性だけ、知能だけ、大脳皮質だけ、というように、有機体である人間のなかで「思考」に関係のある部分だけを無理矢理切り分けて研究することが主流のようです。

東洋では、老荘思想を受け入れてきた長い歴史がありますが、学術の世界やビジネスの世界では西洋からの思考方法・実践方法を取り入れてきたことから、やはり人間という有機体を切り刻んで研究・実践することが目立ちます。

このような状況のなかで、本書は、脳は人間という有機体を生存させるために進化・適応してきていること、脳は身体がなければ、身体からの反応がなければ機能しないこと、を様々な研究結果や著者の仮説を踏まえて解説しています。

理論の中核は「ソマティック・マーカー仮説」で、概略としては、外部環境の変化の知覚(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)⇒内部環境(身体)の状態の変化(これが「情動」)⇒状態の変化の知覚(これが「感情」)⇒推論&意思決定(これが「理性」)⇒行動、という有機体全体にわたるループによって人間は生きている、というものです。
これによって、理性を働かせるためには情動や感情が必要不可欠であることがわかり、純粋理性というものは存在しないことがわかります。
また、このことから人間の理性だけを無理矢理切り出して研究している心理学・脳科学の理論は、全体を表していないことになります。
更に、このことから合理的人間を前提に置くことで理論化している全ての経済学は、根本から再構築しなければならないことになります。

また、心とは脳と身体との相互作用から生まれる様々なボディ・マップのバランスから生まれるとしており、心についてホムンクルス誤謬に陥らずに適切な理論を提示しています。


本書は、人間そのものを正しく理解するための中核的な位置づけになるものだと思います。
人間に関する様々なレベル・エリアの研究や主張がこれまでも、これからも数多く生み出されるのでしょうけれど、本書はそれらの是非を検証するうえで非常に役立つものだといえます。


あと、本書の中核ではありませんが、著者の研究過程で知能について触れられています。
個人的・社会的なものを扱う脳領域(前頭前・腹内側部)と、数学・物理・論理といったものを扱う脳領域(前頭前・背外側部)が異なるということです。これは、ハワード・ガードナーやダニエル・ゴールマンが提唱している多重知能(人間の知能はIQだけではない)、EQ(Emotional Intelligence)、SQ(Social Intelligence)が最高レベルの脳科学者によって立証されたということです。


ただ、残念なのは参考文献が英語表記のままであることです。邦訳された専門書のなかでまともなものは参考文献が掲載されており、かつ邦訳されているものは日本語表記になっています。出版社・訳者どちらの意図で手抜きをしたのかはわかりませんが、読者の方を向いて仕事をしてほしいものです。

(2009/5/26再読によりレビュー内容更新)


絶版になっていた本書が、文庫で再販されましたので、リンクを追加しました。

(2010/7/30)
  1. 2010/07/31(土) 09:56:56|
  2. 脳科学・神経科学
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ゴールド・スタンダード/ジョセフ・ミケーリ



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リッツのマネジメント

リッツ・カールトンについての紹介本は幾つも出版されていますが、本書は、社外の方によるリッツのマネジメントについての紹介本です。

リッツの紹介本は何冊か読みました。それらの本ではいかに高いホスピタリティが提供されているのか、という点での豊富な事例の紹介があり、クレドを始めとした信念や若干の手法が紹介されてはいますが、何故それほどまでに高いレベルでのホスピタリティが可能になっているか、については疑問が残るものが多かったと思います。

本書はそれらとはやや異なり、一流のホスピタリティ事例の紹介に留まらず、その裏にある様々な考え方や手法がこれでもか、というぐらい紹介されています。
クレドがベースにはなっているのですが、それらをどれだけ現場で実際に展開していくかという観点から、大きなものから小さなものまで実に様々な仕掛け、仕組みが張り巡らされていることがわかります。

本書を読むことで、企業が信念を貫き通すためには、どれだけのことをやり続ける必要があるかが、よくわかります。

本書は、ホスピタリティ産業やサービス業の方々にとっては勿論ベンチマーク対象になるとは思いますが、それだけではなく、全ての企業や組織が参考にできるものが盛り込まれています。


また、他の紹介本では、リッツのホスピタリティの成功事例のみを紹介していることが多いのですが、本書では失敗事例や失敗から学んだことも盛り込まれており、リッツとて最初から完璧だったわけではなかったこと、様々な愚直な改善・浸透を続けて今のリッツがあること、がよくわかります。

これらの紹介からも、普通の企業や組織が一流になるために、リッツのマネジメントを参考にして、取り入れることができるのではないか、と思わされます。


机上のマネジメント理論や、斬新なマネジメント手法を学習することも大事だとは思いますが、本書のような、生の企業が継続して信念を貫き通すためのマネジメントを紹介している書籍から学ぶことのほうが有益だと思います。
  1. 2010/07/24(土) 18:30:56|
  2. ホスピタリティ
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プロフィール

I am that I am.

Author:I am that I am.
誇りある日本の復活を望む一日本人

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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