FC2ブログ

伝統・科学・世界を知りマネジメントに活かす

日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

イノベーションと企業家精神(1985)/P.F.ドラッカー



★★★★★

今なお最も体系的なイノベーション実践書

イノベーションについては様々な方が様々な観点を書籍で著していますが、それらのうち主要なものは全て本書で述べられています。

イノベーションといえば、クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』が最近では有名ですが、本書は原著初版が1985年であるにもかかわらず、既にその骨格が示されています。
また、競争優位を構築するという観点からはW・チャン・キム等の『ブルーオーシャン戦略』が有名ですが、こちらも既に示されています。

主要なイノベーション理論の大元が本書であるといえるぐらいに、本書では様々な角度からイノベーションを掘り下げています。

また、単に様々な観点からイノベーションを論じているだけではなく、イノベーションとは何か、イノベーションの源泉は何か、イノベーションを如何にマネジメントすべきか、を体系的に解説しています。
それも一握りの天才が行うものとしてではなく、普通の人々が努力すればできるものとして作られています。
まさにイノベーション・マネジメントを創りだしたといえるでしょう。

更に、他のイノベーション手法が、まるでそれだけで上手くイノベーションできるように論じているのに対して、本書では、各々のイノベーション手法が成功するための前提条件や制約・限界を提示しており、市場・顧客・自社の状況に応じてイノベーション手法を使い分けるべきとしています。
個々のイノベーション手法の活用を検討する際に本書は有益な視点を与えてくれるものとなっています。

特筆すべきは、類書が企業内部からイノベーションを捉えているのに対して、本書では企業外部(社会・市場)からイノベーションを捉えていることです。
イノベーションが新たな顧客・需要を創造することである以上、企業外部から捉えるのは当然のようにも思えます。
しかしイノベーションというとアイデア・イマジネーション・クリエイティビティという用語が思いつきやすいように、企業内部や個人の頭の中からスタートする解説の方が数多く見受けられます。
勿論、これらは大事なことなのですが、イノベーションの目的は何か、という観点からスタートしている本書の価値は極めて大きいのだと思います。

イノベーションに関する様々な書籍を読みあさった後に本書を読み返したことで、本書の価値の高さを再認識することができました。

(2009/12/20再読によりレビュー内容更新)
  1. 2009/12/20(日) 09:18:18|
  2. ドラッカー執筆書
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

戦略人事マネジャー/ラルフ・クリステンセン



★★★★★

戦略的人材マネジメントの全体像を提示した稀有な本

本書は、企業が持続的な成長を推進するために、ライン部門が差別化し、顧客ニーズに応え、成果を生み出すうえでの、様々な人材・組織面での課題を上手く解決していくこと、を戦略的人材マネジメントと定義し、その全体像を提示したものです。

戦略的人材マネジメントを真正面から提示した書籍は極めて珍しく、私の知りうる範囲では、David Ulrichの『MBAの人材戦略』『人事が生み出す会社の価値』ぐらいしかありません(著者名は日本語での表記が統一されていないので英語表記です。それぐらい浸透していません)。日本人による著作は皆無だと思います。

戦略という単語をつけた人事関連書籍は数多くあるのですが、何れも表層的・局所的なものであり、戦略的人材マネジメントとは何か、を包括的に著してはいません。

一方で、BPR、BPO、IT化による効率化・コストダウンをやりつくしてなお、競争優位が得られない状況の企業では、人材や組織文化での差別化を本気で検討すべき状況になりつつあり、戦略的人材マネジメントはその重要性を日に日にましていると思われます。そしてこの要請に応えている人事部門はあまり見受けられません。

従って、本書は全体像を著したというだけでも非常に価値のある本だといえます。

また、どうすべきか、といったゴール設定だけでなく、いかにすべきか、といった変革プロセスも書かれていますので実践での有益性もあります。

更に、著者が事業会社の人事担当副社長として、実際に人事部門を戦略的人材マネジメントができる組織に変革した実績に基づいて書かれていますので、信頼性もあります。


著者自身も記していますが、戦略的人材マネジメントの領域自体が新しいものであり、これから関与していく人たちが競争・協業しながら発展させていく必要があり、従って、本書の内容は決して洗練されたものではありません。

しかし、大まかには何をすべきかは明確に示されており、また個々の領域での参考文献も提示されていますので、戦略的人材マネジメントを推進しようと考えている方にとっては、有益な指針を与えてくれます。また、推進するに際して、自身の強みと弱みもわかる程度には踏み込んだ内容になっていますので、スキル開発・キャリア開発の参考にもなります。


残念なのは翻訳です。日本での経営用語として定着していないカタカナを使ったり、外来語として定着していないカタカナを使ったりと、読むのに多少苦労します。あと、タイトルも本書の内容に合っていません。
  1. 2009/12/16(水) 17:19:00|
  2. 戦略的人事
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ポスト資本主義社会(1993)/P.F.ドラッカー



★★★★★

日本の長期低迷の原因が見えてくる

ドラッカーは1993年に本書にて、これから到来するであろうポスト資本主義=知識とそれを生み出し扱う人間を中心とした世界について提言しています。

知識を知識に適用し、これによって知識の生産性を高め、知識労働者やサービス労働者の生産性向上を、製造や物流の労働についてなされてきたレベルで向上させることが重要であると説いています。
特にサービス労働者の仕事を、生産性を高めるために、更には従事する人々が誇りがあり、学習し続けられ、昇進していくことができるように、これらを本業とすることのできる企業を作り、これらを本業としない企業から分離する(現在のBPOやSSCなど)ようにしていくことが重要であるとしています。
このような観点から日本企業を見ると、まだまだ中途半端であることは間違いないでしょう。BPOやSSCは取り組まれてきてはいますが、あくまでも業績悪化を軽減するための後追いの施策であり、かつコストダウンの目的でしか行われていません。

また、マクロの経済学においても、一部を除いて相変わらず「完全競争」「完全合理性」「静的均衡」という実際の市場ではありえない前提を置き、かつ「土地」「資本」「労働」といったこれまた実際の市場では二義的な要素でモデルを作っていることを指摘し、知識・人間を、また知識の生産性を中心に置いていないため、ここからまともな施策を撃つことはできないと批判しています。
このような観点から日本の経済学の世界を見ると、相も変わらず過去の著名な経済学者の学説をなぞったりしている学者が多すぎます。新たな観点でマクロ経済モデルを構築するような学者は見受けられません。また、ノーベル賞を受賞するような学者は出てきていません。

更に、知識の源泉である学校教育においても、知識の「記憶」と「反射」を繰り返しているだけの教育内容であることを指摘し、知識を学ぶこと、教えること、使うことを教えなければならないと批判しています。
このような観点から日本の学校教育を見ると、ドラッカーの指摘・批判がそのまま当てはまります。ゆとり教育をどうするか、という低次元の議論に終始しているようでは、何も生まれてはこないでしょう。

本書を読むことで、日本がバブル崩壊以降(もっと言えば高度経済成長終了後)、かなりの期間にわたって低迷している理由が見えてきます(勿論他にも理由はあるのでしょうけれど)。


(2009/12/13再読によりレビュー内容更新)
  1. 2009/12/13(日) 16:47:56|
  2. ドラッカー執筆書
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

未来組織のリーダーシップ/フランシス・ヘッセルバイン等



★★★★★

秀逸なリーダーシップ論文集

ネットでのお薦め書籍や良書の参考文献などを参考に書籍を購入すると、たまにではありますが、全く見逃していた良書にであうことがあります。本書もその一つです。

本書は、ドラッカー財団が企画した未来シリーズ三部作の一つです(他は『未来社会への変革』『企業の未来像』)。

著名なリーダーシップ研究者・コンサルタントや企業のリーダーたちによる提言を集めた論文集です。様々な方々が、様々な切り口からリーダーやリーダーシップを語っています。

リーダーシップとはこうあるべき、というものが世の中で収斂されている状況ではないことから(収斂されるものでもないでしょうから)、各々の提言については全てを貫く共通項はありつつも、各々独自の見解が展開されています。

ただし、著名な著者らの提言ですから、各々が秀逸なものであることは間違いありません。これらの提言を読むだけでもリーダー・リーダーシップに対する理解が深まります。

また、各々の切り口は頷けるものが多く、リーダー・リーダーシップとは何かについて考える際には、本書は有益な視点を与えてくれます。

更に、リーダー・リーダーシップとは何かについて更なる知識を収集するうえで、共著者らの書籍や論文を紐解くきっかけとしても、本書は有益なきっかけを与えてくれます。

そのうえ、訳者解説において、共著者らの提言の共通項が整理されていたりと、本書を有効活用するために役立つ解説がなされています。


ただし、本書は紙面の都合で原著からかなりの章を削除したようで(訳者解説による)、これが非常に残念だと思います。出版社にも様々な都合・制約があるのでしょうけれど、良質な情報を提供するという出版社としての使命を忘れてほしくはないと思います。
  1. 2009/12/10(木) 11:55:11|
  2. リーダーシップ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

I am that I am.

Author:I am that I am.
誇りある日本の復活を望む一日本人

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

Amazon.co.jpアソシエイト
iTunesアフィリエイト

FC2カウンター

カレンダー

11 | 2009/12 | 01
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

カテゴリーサーチ

カテゴリーツリー

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

最近の記事

月別アーカイブ

RSSフィード

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる