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伝統・科学・世界を知りマネジメントに活かす

日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

「多様な意見」はなぜ正しいのか/スコット・ペイジ



★★★★★

多様性の功罪をモデル化

人の多様性を、認識(観点・解釈・ヒューリスティック・予測モデル)と好み(目的の好み・手段の好み)に区分・定義し、各々の多様性が如何なるものか、どのように働くのか、またそれらの関係はどのようなものになるのか、などについてわかり易いモデルと事例、過去の様々な研究結果を活用しながら、解き明かそうとしている本です。

結論としては、能力の高さも能力の違いも何れも同じぐらい重要であること、認識については予測や問題解決という局面では一様であることよりも多様であることの方が効果が高くも低くもなること(分散するということ)、決まりきったことを行う場合には一様であることの方が多様であることよりも効果が高くなること、好みについては目的の多様性は利益よりも損失のほうが大きいこと、などが得られています。

信念先行の書籍にあるような「全面的な多様性の礼賛」とはならない結果が出ていることに価値があるといえます(社会正義の面でどうかということでなく、企業の持続的な成功という観点で)。


企業経営に置き換えてみると、一定以上の能力を持つ人材を採用し、企業目的や価値観を共有した上で、将来予測やイノベーション(問題の発見や解決)という局面では多様性を活用し、そこで得られた解の実践については一様性を活用することが効果的、ということになります。

これは当たり前のことのようであり、またイノベーションに関する良書でも同様の解が得られていますが、学術的に裏付けられたことに価値があるといえるでしょう(著者は経済学者)。


なお、でき得るならば、認識の多様性についても好みの多様性についても、心理学や脳科学・神経科学で得られた知見を取り込んで、より科学的に精度の高いモデルを提唱して欲しかったと思います(認識についてはガードナーの多重知能理論など、好みについてはクロニンジャーのパーソナリティ理論など)。

あと、本書の日本語サブタイトルが「衆愚が集合知に変わるとき」はミスリードします。能力の高さと多様性を同等に重視する必要があると結論づけられている本ですので。
  1. 2009/08/22(土) 18:49:09|
  2. イノベーション
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イノベーションを生み続ける組織/ランドン・モリス



★★★

イノベーションに関する様々な理論を整理

イノベーションについて、プロセスとタイプの軸をメインとして、その中に既出の様々な理論・方法論を整理した本です。

ビジネス書で扱われている知見だけではなく、社会科学の様々な領域から必要なものを集めています。従って、イノベーションのマネジメントを体系的に学びたい方にとっては価値のある本だといえます。また、イノベーションについての特定トピックについて辞書的に活用することもできます。更に参考文献がしっかり記載されていますので、本書で紹介された様々な理論・手法を更に学習するためのハブとしても利用価値があります。


但し、理論を重視した本ですので、実際のイノベーション事例や、イノベーション実践の生々しい苦労などについては最小限に抑えられていますので、臨場感を得ることは難しいと思います。


また、前提としている人間の本質については浅いといわざるを得ません。人は誰でも創造的であるとか、人は本来変化や新規制を好むとか、人は適切な環境を与えられれば誰でも成長できるといった、育ち主義(生まれ主義に対する)的な発想を前提としています。イノベーションの普及段階についてはエベレット・ロジャーズの『イノベーションの普及』(人の持つ特性によってイノベーションの受け入れられ方が異なるというもの)を活用しているにもかかわらずです。確かに本書の理論を実践することでイノベーションは加速するのだとは思いますが、人の本質部分の個人差を無視していますので、組織内の個々人の持つ特性によっては実践度合いに差が出ると考えたほうがいいでしょう。
人間の本質については、人間の生物学(脳科学・神経科学・遺伝学など)の知見が積みあがってきていますので、これらを取りこんだうえで本書を活用する必要があると思います。

更に、企業活動においては標準化・均質化によって活動の品質を安定させることが重要なものが少なくないのですが、本書はこれらの活動を無視して、全てイノベーションを起こすべきであるという認識に立っています。本書でのイノベーションには漸進的なものも含まれていますが(所謂カイゼン)、組織構造・文化の段になると、せっかくのイノベーションのタイプ分類が崩れてしまっています。
企業活動において、イノベーションの追求と効率化の追求との二律背反するものをどうすべきか、ということについては、クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』など、ジェフリー・ムーア『キャズム』など、P.F.ドラッカー『イノベーションと起業家精神』など、を体系のメインにする必要があると思います。

この点が気になりましたので、★を減らしています。


ただ、これらの点に気をつければ、本書は非常に役に立つ本だと思います。
  1. 2009/08/19(水) 16:50:25|
  2. イノベーション
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イノベーションへの解 実践編/スコット・アンソニー等



★★★★★

イノベーション=持続的&自律的な成長戦略の実践

クリステンセンのイノベーション3部作『イノベーションのジレンマ』『イノベーションへの解』『明日は誰のものか』を踏まえつつ、クリステンセンと著者らでつくられたイノサイトというイノベーション・コンサルティング会社での実践を通じて得られた知見を、方法論として構成した内容を紹介しています。

類書とは異なる本書の価値は以下のようなものです。

持続的かつ自律的な成長戦略としてイノベーションを捉えています。
イノベーションに関する書籍には、イノベーションを単なる新商品開発として定義していたり(空間軸)、イノベーションを一回限りのイベントとして捉えていたり(時間軸)、というように、また、イノベーションのためのアイデア創出に偏っていたり、定型的なプロセスに偏っていたり、というように、イノベーションの一部のみを取り扱っているものが多く見受けられます。
しかし、本書では成長戦略としてイノベーションを位置づけていますので、企業経営においてイノベーションがどのように取り扱われるべきかについて俯瞰することができます。

イノベーションをマネジメントするための整合した方法を提示しています。
既出の戦略論、マネジメント手法、マネジメントツールが数多く登場します。最初は既出の経営理論の焼き直しかと思わせるような印象を持ちましたが、そうではなく、イノベーションを成功させるためにマネジメントはどうあるべきか、ということを踏まえて要所を整理した結果、イノベーションに必要な主要な経営理論が登場し、かつイノベーション用途にカスタマイズされている、ということです。
主要な経営理論・手法を学ばれている方にとっては、よく知っているものが登場しますので、イノベーション用途にどのように再解釈すればよいかがわかると思います。またイノベーション手法を学ばれている方にとっては、経営レベルでイノベーションを検討する際に如何なる経営理論を活用すればよいかがわかると思います。

イノベーションの実例や実践を通じたヒントが数多く提示されています。
本書や理論書などをもとにしてイノベーションを推進していく際に起きそうな個別具体的な問題が大小限らず登場します。これらによってイノベーションを計画する際に陥りがちな問題を事前にある程度把握することもできるでしょうし、実際に問題が起きた際にも「自分たちだけではない」というある種の安心感を得ることもできるでしょう。

なお、イノベーションを推進する人(オーナー・リーダー・メンバー)の能力・経験、人選、体制については重要な鍵であることは訴えていますが、本書はどちらかといえばプロセスに重きを置いている本ですので(それでも前述したとおり幅広いものですが)、人については他の書籍で補完されたほうがよいでしょう。マーク・ステフィック&バーバラ・ステフィック『ブレイクスルー』がお薦めです。

あと、邦訳が少し残念です。経営用語や人名について日本ですでに流通しているにもかかわらず訳者がそれを使っていないことがあります。このあたりはもう一段配慮して欲しいところです。
  1. 2009/08/17(月) 13:35:40|
  2. イノベーション
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貧困のない世界を創る/ムハマド・ユヌス



★★★★★

近年、稀にみる社会的なイノベーション

著者らがバングラディシュを中心に展開しているソーシャルビジネスについての目的・歴史・実践について解説している本ですが、実はグローバル市場経済の発展とその中での企業間の熾烈な競争から生まれたビジネスの様々な知見を、貧困解消という目的のために最大限に活用するという、近年、稀にみる社会的なイノベーションについての本です。


貧困解消のための開発経済については、その目的からしてリベラル陣営の経済学者が頑張っているのですが、リベラルという信条からどうしても「施す」ことが中心となっています。また、グローバル経済や市場経済を敵視・糾弾することで目的をかなえようとしています。少なくともそのような印象は受けます。

また、国家が行うODAについても、まともなものはあるのでしょうけれど、これも「施す」ことがメインであり、更には本当に施しが必要な人々にいきわたらずに、ODAを提供する国家の関連企業や提供を受ける国家の支配者層にほとんど搾取されているようです。

開発経済に携わっている方々がどれだけ頑張ったとしても、このような現状ではその努力がなかなか報われないのでしょう。


ですので、本書で提示されているソーシャル・ビジネスのモデルが社会的なイノベーションだといえるわけです。

既存の金儲け一辺倒のビジネスを短絡的に敵視するのではなく、その有益な部分を貧困解消という目的のための手段として最大限に活用すること、支援が最も必要な人々に対して彼らが最も必要とすることにダイレクトに支援を行うこと、寄付ではなく投資することで貧困解消のための投資効果を飛躍的に高めること、などによって、これまでの開発経済の制約を打ち破っています。

更には、貧困に陥っている人々の能力を信じ(劣悪な環境下でも生存しているからには能力が高いはずというのが著者の主張)、施すのではなく自律を促すことにフォーカスしていますので、彼らの人間としての尊厳を貶めることなく、支援しています。


ノーベル平和賞を受賞したことで、ソーシャル・ビジネスの存在・目的・手法・効果は世界中に知れ渡り、注目されることになっていくのだと思います。著者の言うとおりソーシャル・ビジネスが通常のビジネスと肩を並べるほどに大きくなれば、貧困が過去のものとなる日がいずれ来るのだと思います。


  1. 2009/08/04(火) 11:05:08|
  2. 持続可能性
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プロフィール

I am that I am.

Author:I am that I am.
誇りある日本の復活を望む一日本人

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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