FC2ブログ

伝統・科学・世界を知りマネジメントに活かす

日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

パーソナリティ心理学/榎本博明



★★

心理学という学問の限界を教えてくれる

本書は性格心理学についての本です。

性格の捉え方について様々な方式が提示されているのですが、心理学という学問領域における統一見解はないようで、今後も統一される気配もなさそうです。

このことが理由でもあるのだと思いますが、心理学だけではなく社会学や脳科学・神経科学での性格の取り扱い方についての解説もあります。但し、3分野での取り扱いについて統合するわけでもなく、補完させ合うわけでもなく、ただ単に併記しているだけです。
著者は、これが新たな挑戦であるという主旨を述べているのですが、この程度で新たな挑戦というのでは、先が思いやられます。少なくとも海外では分野を超えた共同研究が行われ、複数分野の知見を踏まえた統合理論を提唱していますので。

本書でも冒頭2章で述べられているのですが、手法の限界(表層的な現象しか追えない、断片的な調査しかできない、研究者の主観から逃れられない、研究対象者が真実の情報を提供するとは限らない、統計手法を駆使しても基となるデータの信頼性が高くない、など)から、心理学で用いられる既存の手法をどれだけ丁寧に慎重に駆使しても、その結果は世の中では参考程度にしか活用できないことがよくわかります。
本書では、心理学の書籍には珍しく、前置きでこのようなことが述べられているので、まだ誠実な部類に入るのでしょう(このことにより★を追加しました)。

とはいえ、このような前置きをしているわりには、内容解説においては、明確な根拠を提示せずに、これは正しい、と断言している箇所も少なくありません。
また、自然科学を批判している文章が随所に出てきますが、その批判は自然科学に向けられるべきものではなく、自然科学の一部を都合のいいように心理学に取り込んだ心理学者に向けられるべきものです(人の心は測定できないので無視するとした行動科学など)。

このように、心理学の手法の限界を提示しつつも、他の領域を批判することで心理学の地位を保とうとしているかに思えてしまう表現が目につきます。

また、性格心理学だけではないのですが、心理学の理論にはどうも無理矢理構造化しようとしているものが目に付きます。相関関係しか見いだせないのに因果関係・上下関係を無理矢理つけています。

いずれにせよ、心理学の知見はあくまでも参考程度に活用すべきであり、まるごと信用してはいけない、ということを認識させてくれたことについては価値ありだと思います。
本書を読むことで、心理学の書籍にはうかつに近づかない方がいいということを再認識させられました。


あと、性格心理学だけでなないでしょうけれど、個人を対象とした心理領域については、脳科学・神経科学・遺伝学の発展を待つしかなさそうです。
心理学では異端とされている理論でも、脳科学・神経科学では実証されそうだというものはいろいろありそうですので(例えば、ハワード・ガードナーの多重知能は、IQ研究者からは異端視されていますが、脳科学者からは自然な理論だと認識されています)。


なお、上記コメントは著者を含めた心理学者に対しての批判ではありません。学問としての心理学そのものの限界を確認しているものです。
少なくともビジネスの世界では、知見の根拠が明確である(検証可能である)、知見が体系化されている(特定分野だけでなく複数分野をまたいで)、異なる知見が収束しつつある、といったものでないと活用しようがありませんので。
あと、このような意味では、心理学に限った事ではありません。経済学も同様です。そしてなんといっても経営学での理論や増殖を続けるビジネス書が最もあてにはならないのですが。
  1. 2009/06/30(火) 16:03:57|
  2. 心理学
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

最新脳科学で読み解く脳のしくみ/サンドラ・アーモット等



★★★★★

広範な最新脳科学の知見を紹介

多分ですが、分厚い脳科学・神経科学の教科書を除けば、本書がこの分野で最も広範に知見を紹介していると思います。脳の基本的な構造、五感と脳の関係、生まれてから死ぬまでの脳の変化、感情と脳の関係、思考・知能・決断と脳の関係、意識・睡眠・精神と脳の関係、などです。


当然、その分各々のトピックは浅めの紹介となっており、トピックごとの様々な研究結果、研究の歴史、今後の課題等については、巻末の参考文献をはじめとして、単一テーマを深く掘り下げた本を読む必要があります。

また、各々のトピックの取り扱われ方の深さに濃淡があります。各々のトピックについての脳研究の歴史と幅が影響を及ぼしているところもありますが、著者の興味や読者の興味(と著者が思っていること)も影響しているような印象を受けます。

とはいっても、世の中に出回っている俗説や似非科学について「おかしい」とわかるぐらいの知見は紹介されています。

日本ではここ数年脳ブームが起きており、マスメディアだけでなく、いい加減な脳科学者も、ろくに研究もされていない情報をばらまいていますが、アメリカでも事情は同じようです。この状況を懸念して著した本だということですので、その目的は達せられていると思います。

日本の脳科学者が同じような目的で著した本に久保田競「バカはなおせる」がありますので、こちらも参考にされるといいでしょう。


あと、本書の冒頭に、俗説・似非科学にどれだけ読者が毒されているか、を簡単に診断するアンケートが載っていますので、買われる前に、読まれる前に、これだけ試してみるのもいいでしょう。


脳科学・神経科学についての基本的な正しい知識を一通り知りたい方にはお薦めの本です。
また、すでにこの分野に興味を持って学習されている方にとっても、自身の知見がどの程度偏っているのか、バランスが取れているのか、を確認するのには良い本です。
  1. 2009/06/29(月) 17:32:03|
  2. 脳科学・神経科学
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

脳はあり合わせの材料から生まれた/ゲアリー・マーカス



★★★★★

極めてわかりやすい進化脳科学の入門書

認知科学等の研究から得られた知見である人間の脳が陥りやすい様々なエラーを題材として、脳がどのような進化の過程を経てきたか、を整理の骨格として、人間の脳の働きについて解説した本です。

エラーについては、進化論に対抗するために妄想されたインテリジェント・デザインを嘲笑うかたちで、「優秀なエンジニアが完璧な脳を作ったらこうなるはず」という、ある意味での理想的な姿を描いたうえで、実際の人間の脳は、これと何がどれぐらい異なっているか、を明らかにしています。

また脳の進化については、大脳皮質と辺縁系以下に大きく区分し、進化の過程で早く生まれた方(辺縁系)が遅く生まれた方(大脳皮質)を支配している、ということ、また各々が別の適応に向けて進化したこと、を概説し、様々なエラーの原因を、この2つの領域の在り方に求めています。

このようなかたちで整理されていますので、非常に分かりやすい解説になっています。
また、詳細な脳機能の説明こそ省かれてはいるものの、主な内容については質を落とさずに解説していますので、安心して学習することができます。
これまで読んだ脳科学の本の中では、最も分かりやすい部類にはいります。

更に、本書で明らかにされた脳の在り方や動き方に基づいて、様々なエラーと上手く付き合うためにはどうすべきか、というアドバイスもしています。これについては、質の高い類書にも出てきている内容ですが、どちらかというと感情に支配されないように理性を意識・活用しましょう、という以上のものではありません。
また、暗記中心の公的教育の在り方にも苦言をていしていますが、これもよくありがちなものです。
とはいっても何れも重要な提言ではあります。

あと、参考文献がしっかりと掲載されています。本書の裏付け確認をされたい方や、本書を踏まえて更に学習されたい方には有益な情報です。
  1. 2009/06/26(金) 14:39:23|
  2. 脳科学・神経科学
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

クリエイティブ都市論/リチャード・フロリダ



★★★★★

クリエイティブな人材と環境の関係

前著『クリエイティブ資本論』『クリエイティブ・クラスの世紀』で明らかにした、経済発展におけるクリエイティブな人材の重要性、クリエイティブな人材を引き寄せ、引き止めることの重要性を踏まえて、クリエイティブな人材と環境との関係についての、世界中の都市の比較分析とアメリカでの詳細な分析に基づいた理論を深堀りしている本です。

本著では、各都市で如何なる産業が集積しているのか、そこでのクリエイティブ度合いはどの程度か、といった観点での調査・分析により、マイケル・ポーターの産業クラスター理論をベースとしつつ、著者の専門領域であるクリエイティブ人材の集積のされ方について比較をしています。
これによって前著まででは単に「クリエイティブ・クラス」とひとまとめにされていたものが、産業によって細分化され、その産業と求められるクリエイティブタイプによって整理されています。

更に、アメリカ国内に限ってですが、各都市での産業クラスタ・クリエイティブタイプと、そこに集まる人間の性格との相互関係についても、既存の様々な心理学的な調査結果や新たな調査を踏まえて解き明かしています。
人間の性格の違い(ここではビッグ5といわれる性格の主要5因子:経験への開放性、誠実性、外向性、協調性、情緒不安定性)によって、人が集まる都市が異なっていることや、特定の性格を持つ人間がその都市に引き寄せられ都市の性格が強固になり更にその性格を持つ人間が引き寄せられるというスパイラルが形成されていること、が分かったということです。
これはその都市にある産業に携わりたいという仕事面での欲求だけではなく、自分が幸福になるために自分の性格に適した環境を見つける傾向が人間にはある、という心理学者のマーティン・セリグマンやミハイ・チクセントミハイらの見識と共同研究から裏付けられています。

また、これらのことから人と産業の集積化は益々進んでいくことになり(調査結果で実際にそうなっていることは本書で示されています)、トーマス・フリードマンが提唱する「フラット化する世界」には完全には以降しない、むしろ集積化が進んでいると反論しています。
ただ、著者も「集積化」「フラット化」の単純な二元論ではなく、クリエイティブなものは集積化に向かい、そうでないものはフラット化に向かうという2つの全く異なるベクトルが同時に働いているのではないか、としています。


日本国内についての調査は結構大雑把ですので、本書の調査結果をそのまま国内で活用するのは無理があります。
また、都市に集まる人の性格がそのまま都市の性格になるというのも少し単純すぎます。個人の性格に拘わらず集団としての性格ができてしまうという人類学の研究結果もありますので。
とはいえ、この理論自体が棄却されるものではなく、更に様々な科学分野の知見を統合しつつ、掘り下げていくことで、より磨き上げられた理論になっていくと思います。


あと、前著でもそうでしたが、この理論は企業内でもかなり応用できると思います。企業がクリエイティブになりたければ、クリエイティブな人たちが魅力に感じる施策を他社よりも高く早く推進することが必須である、ということです。
  1. 2009/06/24(水) 11:22:27|
  2. 空間軸(グローバル化等)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

感じる脳/アントニオ・R・ダマシオ



★★★★★

感情についての哲学と脳科学の融合

本書は、著者の研究テーマである人間の脳・身体・心の解明についての一般読者向けの書籍『生存する脳』『無意識の脳 自己意識の脳』に続く3作目という位置づけです。

本書においては、既著で解き明かされた、意思決定における情動と感情の役割(生存する脳)、自己の構築における情動と感情の役割(無意識の脳 自己意識の脳)での知見をベースとして、感情そのものに切り込んでいます。

解説の仕方として、戦略的に人間の情動・感情を分離して取り扱い、情動と感情についての解説を行ったうえで(ここまでは前著の知見がベースになっています)、それらを本来のかたちに統合し(人間の身体の中では統合されているので)一つの系として感情とは何か、何の役に立つのか、それがどのように進化してきたのか、生得的なものと後天的なものは何か、といった観点で解説しています。

そのうえで、まだまだ未解明なところは多いと断りつつも、人間の心について、これまで得られた科学的な知見をもとに仮説を組み立てています。

また、原著タイトルである「スピノザ」については、著者のこれまでの研究結果から、最新脳科学の知見に概ね整合する哲学者としてスピノザを取り上げ、スピノザの提唱した哲学や、その背景としてのスピノザの生きた時代・生き方を織り交ぜながら、感情そのものについて解説しています。
最近の脳ブームに便乗した本の中には、自説に都合のよい脳科学・神経科学の知見だけを取り込んでいるものが少なくありませんが(特に社会科学系の学者に多いです)、本書はそれとは一線を画しています。
確かに著者はスピノザの哲学に触発されてはいますが、自身を含めて行われた研究によって得られた最新の知見をもとに体系化された情動・感情についての理論をまず明確に提示し、それに見合う哲学を探したらたまたまスピノザだった、というものです。

更に、これらの脳科学・神経科学の知見とスピノザの哲学を踏まえて、これから人間が幸福に生きるためのアドバイスを試みています。
スピノザの哲学そのものを読んだことはないのですが、著者の解説からは、老荘思想・禅に似たものだと推察されます。

あと、情動・感情と、それらを司る脳部位を階層化・体系化して解説していることから、日常的によく使われる心理用語(欲求・欲望・動機・意識・無意識など)が結果として上手く整理されています。
心理学用語辞典などでは、わかったようでわからない定義がされていたりしますが、本書によってこれらの用語が脳科学・神経科学の知見と組み合わさったかたちで上手く定義されています。


なお、前著2作ともそうでしたか、本書も翻訳がいい加減です。参考文献の紹介は無く、原著者注で表わされている引用文献について邦訳出版されているものでも日本語名が表記されていません。一方で、あまり意味があるとは思えない訳者まえがきがあったりします。
本著から出版社がダイヤモンド社に変わりましたが、邦訳のいい加減さは変わっていません。本体の内容が素晴らしいので★5つにしていますが、出版社・訳者には辟易しています。

(2009/6/23再読によるレビュー更新)
  1. 2009/06/23(火) 14:43:40|
  2. 脳科学・神経科学
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

使い勝手を少しだけ改善しました

カテゴリーがかなり多くなってきましたので、
カテゴリー検索機能を追加し、かつカテゴリーを階層化しました。
  1. 2009/06/17(水) 15:07:01|
  2. 書評について
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

脳のなかの倫理/マイケル・S・ガザニガ



★★★★★

最新の脳科学・神経科学の概略とその捉え方

最新の脳科学・神経科学の知見を簡潔に紹介したうえで、それを生命倫理という視点からどのように捉えるべきか、どのように活かすべきか、について解説している本です。

宗教や文化、哲学といった、人間の歴史が作ってきた観念だけからみた生命倫理についての論争は数多くありますが、科学的な知見を十分に踏まえたうえでの提言は本書を含めてもあまりないように思われます。このことだけからも本書は有益なものだといえます。

また最新の脳科学・神経科学から、人間とは如何なるものであることが分かってきたのか、ということが生・死・能力・意思・道徳といった観点から整理して書かれており、これらの分野について一通りの最新知識を得るということだけにでも十分に活用できるものだと思います。

更にこれらの知見を踏まえたうえで、既存の宗教や文化、哲学に過度に惑わされることなく、正しい知識のもとに倫理を考えなければならない、としています。
ただし、これらの思想を科学的ではないと単に否定するのではなく、それらは訴えられた時代における科学的な知識・推測をもとに作られ広められてきたものであるとし、それらを最新知識を活かして更新するという作業・思考の変換が必要である、としています。

そのうえで、生命倫理について考える際には、脳科学・神経科学で得られた知見を思考過程にも導入していくことが必要だとしています。つまり考える際に人間が陥りやすい罠、その背景にある人間の本性を認識したうえで、考え方や思考過程そのものに注意しながら倫理の在り方を検討すべきである、ということです。

あと、全般的に非常に読みやすい文章となっています。振り返ってみると一文一文が非常に簡潔に表わされており、また専門的な解説・補足を脚注に置いていることが読みやすさの理由ではないかと思います。

さすが、脳科学・神経科学の第一人者だけのことはあると思います。
  1. 2009/06/17(水) 13:59:30|
  2. 脳科学・神経科学
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

マインド・マターズ/マイケル・S・ガザニガ



★★★★

包括的な脳機能の解説

20年前に出版された本ですので、現在の最新脳科学の知見を踏まえると個々の脳機能の解説については確かに古さがあります(古いというだけで★1つ減らしました)。

しかし、脳機能について、当時の脳科学・神経科学・生理学・遺伝学の知見をフルに活用して、知能・不安・苦痛・ストレスなど、日常生活において人が感じる、気になる広範囲の事象について解説しています。
また、心・脳・身体の相互関係について、いずれかに過度に偏ることなく解説しています。

現在における本書の価値は、広範な脳機能についての自然科学の知見をフル活用した包括的な解説とその姿勢にあると思います。

脳機能の特定の領域のみについての解説、特定の学術領域にのみ偏った解説、果ては脳科学者の肩書を使っただけの安易・浅薄な入門書、などが、脳科学ブームによって氾濫しています。
このようなご時世のなかで、本書のようなスタンスは非常に価値があるとおもいます。これだけ広範に脳機能を解説する書籍を出版している脳科学者は、著者以外には、アントニオ・R・ダマシオぐらいだと思います。

著者の著作の中で邦訳未出版のものが結構ありますので、それらの邦訳出版を是非期待しています。


  1. 2009/06/10(水) 14:22:16|
  2. 脳科学・神経科学
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

無意識の脳 自己意識の脳/アントニオ・R・ダマシオ



★★★★★

意識(自己の構築)における情動と感情の役割

著者の前著「生存する脳」で明らかにされた脳と身体の関係をベースにし、かつ前著で明らかにしきれなかった意識について解明しています。

意識を無意識・中核意識・延長意識の3要素に分割し、かつこれらの上下関係・相互作用のあり方を明確にし、これらを担う脳と身体の箇所を特定しています。

無意識は、脳幹核・視床下部・前脳基底部・体性感覚皮質の一部である島・S1・S2の相互作用として、
中核意識は、無意識を担う領域と、帯状回・視床・上丘の相互作用として、
延長意識は、無意識・中核意識を担う領域と、大脳皮質の相互作用として、生まれるとしています。

そして、これらの相互作用がニューラル・パターン、血液、化学物質の変化といった複数のルートを介して、相互作用が図られているとして、ホムンクルス誤謬を回避しています。

また、意識は進化適応の産物であるとして、無意識⇒中核意識⇒延長意識の順に、下位レベルの機能を効率的に活用できるように生まれてきたとしています。人間が持つ延長意識は、感情を感じることによって遺伝子による生得的な反応を超えて、環境に適応できるように進化したのだとしています。


更に、この構造のもとで、延長意識を中心に理論を展開しているダニエル・デネット「多重草稿理論」などの理論との整合が図られています。


そのうえで、心のメカニズムは脳科学によって解明できるとして、本書を契機にして更なる科学的な究明を促しています。本書では検証可能な形で理論構築をしていますので、研究によって本書の内容が更に裏付けられるか、修正を受けるか、といったまっとうな進められかたがなされるでしょう。このあたりが、自然科学の強みといえるでしょう。

一方で、どれだけ脳科学が発展したとしても、個人の主観的な心の状態は決して解明できないとしています。基本的なメカニズムとそれによって生み出される個々人の心を明確に分けています。

これらの解説によって、従来の心と脳に関する唯物論と二元論の対立は、このあたりの適切な区分なしに不毛な論争をしあっているのだと警鐘を鳴らしています。


前著「生存する脳」の延長線上の理論であること、前著と比べて脳科学の専門用語を多様していることから、本書を読むには前著を事前に読んでおくことをお勧めします。


なお、本書では参考文献は掲載されていません。著者は科学者ですので参考文献を割愛することは考えにくいです。したがって、邦訳段階で削除されたのだと思います。前著では参考文献を邦訳せず、本書では参考文献そのものを削除しています。この編集・出版姿勢は許容できるものではありません。出版社・訳者には猛省して頂きたいと思います。ただ、このような欠陥を相殺して余りある内容の良さですので、評価は下げていません。


(2009/6/5再読によりレビュー更新)
  1. 2009/06/05(金) 11:49:37|
  2. 脳科学・神経科学
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

I am that I am.

Author:I am that I am.
誇りある日本の復活を望む一日本人

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

Amazon.co.jpアソシエイト
iTunesアフィリエイト

FC2カウンター

カレンダー

05 | 2009/06 | 07
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -

カテゴリーサーチ

カテゴリーツリー

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

最近の記事

月別アーカイブ

RSSフィード

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる