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伝統・科学・世界を知りマネジメントに活かす

日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

思考する言語/スティーブン・ピンカー



★★★

言語学の本

本書は、スティーブン・ピンカーの言語学領域での3部作(内1作は邦訳なし)の3作目であると共に、進化心理学領域での3部作の3作目という位置づけのものです。

私は、ピンカーの進化心理学分野での新たな知見を得たくて本書を読みましたが、残念ながら特段新たな知見は見いだせませんでした。

前2作「心の仕組み」「人間の本性を考える」では素晴らしい切れ味で進化心理学を解説していましたが、本書ではそれがありませんでした。

言語学・進化心理学の両方を著者自身が集大成しようとしたのだとは思いますが、それであるが故に内容がかなり散漫になっていると思います。

なお、言語学における本書の位置づけや価値についてはまったくわかりませんのでレビューは差し控えたいと思います。




  1. 2009/05/21(木) 15:41:16|
  2. 進化心理学
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脳の中の身体地図/サンドラ・ブレイクスリー



★★★★★

身脳一体

身体と脳との関係、その一体性について、最新の脳科学・神経科学の知見と、わかりやすい具体例をふんだんに盛り込んで解説しています。

身体と脳との関係については、これまでアントニオ・ダマシオの著作を読んでいましたので、基本的なことについては理解していましたが、本書はそれを凌ぐ内容となっています。

身体を捉える様々な軸であるボディ・マップ、それを構成するボディ・スキーマ(身体の物理的な特性を表わす)とボディ・イメージ(身体についての学習から生じる)が身体と脳との一体性を生み出すと共に、それらの不整合から様々な問題が起きることを示しています。

更に、ボディ・イメージについて、自身の記憶や願望が影響することでボディ・スキーマとの乖離を引き起こすこと、欧米人と日本人とでは、外界の見方が異なる等の知見を踏まえて、身体と脳との関係についての自己認識において文化が影響すること、を指摘しています。

そのうえ、これらの解説を踏まえたうえで、オーラや体外離脱、ドッペルゲンガーの解説といった、これまであまりまともに科学的には説明されてこなかったものについても解説を試みています。


また、身体の重要な部分である内臓と脳との関係の重要性について、アントニオ・ダマシオのソマティック・マーカー仮説(情動は内臓からの情報伝達により生まれる)を踏まえつつ、新たな知見を加えて解説を加えています。


あと、本書においては、身体と脳との関係が崩れた際の処方箋についても幾つか紹介していますが、その中には禅の教えに近いものが結構含まれています。

禅は身体と脳との関係を踏まえたうえで、意識しながら脳と身体をコントロールするものであることから、本書の内容に当然整合するのでしょう。脳を単独で語るのではなく身体との関係を踏まえて明らかにすることで、西洋の科学が東洋の思想と上手く融合するきっかけが生まれています。


ラマチャンドラン、ダマシオ、ガザニガが推奨するだけのことはあります。価値ある本です。


ただ、残念なのは参考文献が一切掲載されていないことです(原著でも)。本書には、様々な新たな知見が紹介されていますので、参考文献が是非ほしかったところです。
  1. 2009/05/20(水) 17:30:35|
  2. 脳科学・神経科学
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ブレイクスルー・カンパニー/キース・R・マクファーランド



★★★★★

秘訣は人を活かすこと

ドラッカーをリスペクトしている著者が、ジム・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー2」と同様の調査・分析手法を活用して導き出した、ベンチャー企業がブレイクスルーするための条件を体系化した本です(ちなみに、ジム・コリンズも現代のドラッカー、またはドラッカーの意思を受け継ぐ者として位置づけられているようです)。

ドラッカーをリスペクトしているが故に、人にかなりフォーカスされたものとなっており、またジム・コリンズが採用した手法を適用しているが故に、具体的な事例をふんだんに盛り込んだうえでのしっかりとした提言となっています。

戦略・育成・実践の全てにおいて人をどれだけ上手く巻き込み、能力をどれだけ引き出し、成果につなげていくか、がポイントであり、そのために重要となる施策を提示しています。

ドラッカーの主要な著作を読破している方からすれば、当たり前のことが並んでいるだけだという印象を与えると思いますが、それでも、相当な調査・分析を踏まえてドラッカーの思想が肯定されているということに価値があると思います。今の時代においてなおドラッカーの思想が重要であるということを再認識させてくれる本書は価値があると思います。

また、本書での提言は、ピーター・センゲの提唱したラーニング・オーガニゼーションや、エドガー・シャインが提唱したプロセス・コンサルテーションが非常に重要な要件であることも裏付けるかたちになっています。戦略・組織・業務プロセスという箱モノを作ることよりも、人がそれらを上手く構築できるようになること、そのために人を上手く活かすことのほうが経営において重要であることが再確認できます。

さらに、企業の発展段階を踏まえると、ベンチャーの飛躍は本書、大きくなってからの変革は「ビジョナリー・カンパニー2」、ビジョナリーを維持発展するためには「ビジョナリー・カンパニー」というかたちで上手くこれらを活用することができると思います。
  1. 2009/05/11(月) 11:36:52|
  2. マネジメント
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経済幻想/エマニュエル・トッド



★★

経済幻想という妄想

経済の世界を人類学的な視点から捉え直すという試みそのものは、経済学の内側からはなかなか発想できないことでしょうから、これについては経済学への新たな切り口の提供という価値を持っています。

また、それらの切り口を踏まえたうえで、資本主義には幾つかのかたちがあり、様々な国において歴史を経てきた家族構成がそのかたちを形成し、それぞれの資本主義の特徴を作り出し、それらの特徴が交差・補完しあうことで世界経済が成り立っている、という説を、著者の得意な領域での統計数値を駆使して導き出していることも価値アリだと思います。


ただ、これらのことと、本書の大半を構成する国家ありきの保護主義の提唱については、基本的につながっておらず、相当の論理飛躍があります。

自由市場貿易は先進国の賃金を低下させ、それによって購買力を低下させ、その結果需要が鈍化・停滞する、また不平等を引き起こすから、保護主義を取るべきだ、としています。
先進国で起きるとしているこれらの事象そのものは実際に起きており、事実ではあるものの、それをもって保護主義を取るべきだというのは、発展途上国の民を無視したまことに自国中心主義のともすれば危険な内容になっています。

また、盲目的にケインズ理論を持ち出し(持ち出す祭には著者の得意とするはずの統計データの駆使は一切ありません)、有効需要を作り出すために保護主義にすべき、と訴えています(ケインズがそのように考えていたのか、一般理論を自説に都合の良いように持ち出しただけなのかは知りませんが)。有効需要を作り出すためには、それこそ著者が人類学の枠内で分析しているように、国民の教育レベルをより高めるという方法を提唱すれば済むことだと思います。

更に、国別の経済力の比較において、アメリカを蹴落とすためとしか思えないような乱暴な統計データの取捨選択をしています。サービス産業は価値がまるでないかのような取扱いです。確かにそのようなもの(医療費が高くても死亡率が下がらなければそれは付加価値ではない、など)はありますが、サービス産業の付加価値の値をゼロとして国家間比較をするのは乱暴以外の何者でもありません。

著者の「帝国以後」もそうでしたが、人類学における統計データを駆使した緻密な分析・理論構成に比べて、経済や政治を述べる際には、それらの姿勢がほとんど見えません。アングロサクソン嫌いの保守派学者だと思われても仕方が無い主張になっています。「世界の多様性」が素晴らしい著作だっただけに残念でなりません。

著者解説(wiki):エマニュエル・トッド
  1. 2009/05/10(日) 15:06:18|
  2. 経済学
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帝国以後/エマニュエル・トッド



★★

アメリカ嫌いなのはわかるが。。。

強すぎるアメリカに対する通俗的な反米論調とは異なり、アメリカの弱さが故の暴走という独自の観点での論調は面白いと思います。

しかし、「世界の多様性(第三惑星&世界の幼少期)」で見せた広範かつ緻密なデータ分析を踏まえた丁寧な組み立ては本書ではあまり見られません。
他の著作を読んでいませんので、もしかしたら他の著作でのデータ分析を踏まえているのかもしれませんが、それでも本書での展開は「意見」を超えていないような印象を受けます(但し、「文明の接近」ではデータに基づく緻密な分析を踏まえた提言をしていますので、やはり本書には浮いた感があります)。

アメリカに対する気持ちには共感しますし、アメリカの実際の動きについても頷けるものは多いのですが、科学から離れてしまっているのは残念です。

著者解説(wiki):エマニュエル・トッド
  1. 2009/05/06(水) 10:56:23|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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世界の多様性/エマニュエル・トッド



★★★★★

計量人類学

本書は「第三惑星」「世界の幼少期」という著者の過去の著作を再掲したものです。

「第三惑星」では、人類の多様性を8つの家族構成の違い(親子関係や兄弟関係の従属性や平等性など)で分類可能とし、それらの特徴について述べています。
様々なイデオロギーが世の中にありますが、著者は各々の家族構成が特定のイデオロギーを自然発生的に生み出したと結論づけており、イデオロギーが家族構成を作り出したわけではなく、またイデオロギーが家族構成を無視して広がるわけではないことを解説しています。
また、これまでの人類学や政治学では、家族構成という人類の基本的な最少集団単位を重視してこなかったが故に、人類の多様性やイデオロギーの発生メカニズムを見極められなかった、としています。
但し、何故8種類の家族構成の違いが生まれたか、また定着したか、については、本書では「偶然」としています。ただ、この結論については、著者の同僚からの建設的な批判により、その後の研究で解き明かそうとしているようです。


「世界の幼少期」では、「第三惑星」の分析を踏まえて、家族構成の特徴(親子の関係、夫婦の関係など)により、当該エリアの経済の発展の仕方が異なること、また経済の発展が結婚年齢の上昇、識字率の向上、死亡率の低下、出生率の低下といった流れの結果として起きる、としています。
また、経済学における経済発展の理論は貨幣換算できるものだけを取り扱っており、それだけでは発展の因果関係を見誤るとしています(それでも取り扱うようになっただけましではありますが。アンガス・マディソンが過去1000年以上の経済データを収集・分析するまでは、経済学にはデータに基づく経済発展の理論はありませんでした)。
人類学における著者以外のデータ分析については不勉強なのでよく知りませんが、経済学においてはいろいろと経済発展のパラメータを特定しようという動きが一部にありますので(ウィリアム・バーンスタイン「豊かさの誕生」、ダイアン・コイル「ソウルフルな経済学」など)、これらと統合できれば、更に経済発展を含めた人類の発展のメカニズムが明らかになると思います。


何れのものも、広範かつ膨大な情報の分析に基づいた説ですので、検証可能性があるということから「科学」といえるでしょう。データに基づかない理論(仮説)も科学にとっては大事なものなのですが、理論という名の妄想もかなり多いですので、この手の著作は結構ありがたいと思います。

著者解説(wiki):エマニュエル・トッド
  1. 2009/05/05(火) 10:27:39|
  2. 人類学
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プロフィール

I am that I am.

Author:I am that I am.
誇りある日本の復活を望む一日本人

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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