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Rising Sun

Author:Rising Sun
日本を愛するリヴァタリアン
倉山塾生・江崎塾生

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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(2017・2018)
2018/07/18、突然Amazon.co.jpが事前通知なく全レビュー強制削除&レビュー投稿禁止措置を発動。

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脳はいかに意識をつくるのか/ゲオルグ・ノルトフ



★★★★★

ついに「意識」「自己」が自然科学の領域に入ってきました

久しぶりに読み応えのある自然科学の本に出合うことができました。

本書は、神経科学者・哲学者・精神科医という、
脳と心についての3大領域を一人で兼ねている著者によるものです。

これまでの脳と心の研究については、これらの各領域がバラバラに活動していたため、
それぞれの領域での目的・手法に制約された命題・仮説・検証が繰り返されてきていました。
しかし、脳と心についての真の研究と解明のためには、
これらの領域を横断したうえで、それぞれの知見が統合されることが不可欠なのですが、
これまでそのような試みはなかなかなされず、また上手くいっていませんでした。

また、脳科学・神経科学に限ってみても、
「意識」「自己」については、なかなか上手く踏み込むことはできず、
これらの用語を冠する書籍でも、踏み込みが浅かったり、周辺領域に留まったり、問題をすり替えたりという状況でした。
更に、「意識」「自己」について、
脳の特定領域に還元できず、還元できなくなると複雑系理論の創発性でごまかしたりしていました。
そして、自然科学の性ではあるのですが、
客観性を担保するために「意識」「自己」が本来持つ主観性を軽視・無視してきました。


本書は、上記のように神経科学・哲学・精神科医のタイトルを有する著者が、
それぞれの領域の知見を活かしながら領域横断的に取り組み、これらの領域を統合させています。
また、脳科学・神経科学の上記のようなこれまでの研究とは異なり、
真正面から主観的な「意識」「自己」について、踏み込んでいます。


超要約すると、
「意識」「自己」は、
脳内にある(ので脳とは別に「心」という概念を設定する必要はない。「心脳問題」は的外れ)
脳内の特定の場所に還元できるのではなく、遺伝子-脳-世界との関係・バランスから生じる
脳の表層的な機能ではなく、脳の基盤的な機能である「安静時脳活動」と深くかかわっている
脳内に時間と空間をつかさどるシステムがあり、それがアイデンティティ(1つの連続した自己)を生み出す
(もっと深く何度も読み込めば、もっとまともな要約ができると思いますので、再読を繰り返して精査していく予定です)

素晴らしいことに、著者の本書によって、ついに「意識」「自己」が自然科学の領域に本格的に入ってきました。

一方で、本書内で「未解明」とされる命題が少なくありませんが、
これは著者が誠実な科学者であることの証だと思っています。
少なくとも持論に浮かれて仮説レベルのものを事実と断定してしまう科学者よりはよほど誠実です。

なお、本書では「意識」「自己」の解明のために、うつ病、統合失調症の症例を詳しく説明しています。
いずれの疾患も本書を読むことで、理解が深まりました。
ですので、「意識」「自己」の自然科学での知見に興味のない方でも、
これらの疾患に感心がある方は、読まれるとよいのではないかと思います。

世の中では、これらの疾患に対する誤解や偏見、差別が少なくありませんし、
誰がいつこれらの疾患にかかってもおかしくありませんので、
正しい知識は得ておいた方がよいのではないかと思います。

また、すでにこれらの疾患にかかっておられる方も、
読書ができる状態であれば、一読されることをお勧めします。
ただし、容易に読める本ではありませんので、
読書ができるような状態でない方は、無理して読まないでください。
知識を得るよりも症状を悪化させない方が遥かに重要ですので。

意識と脳/スタニスラス・ドゥアンヌ



★★★

無意識から意識に変わる瞬間の実験結果

『意識』という言葉は様々な意味にとれますが、
本書では無意識と比較した意識に絞り込み、
無意識から意識に変わる瞬間に脳のどこがどのように機能しているのか、
について豊富な実験に基づいて解き明かしています。
意識のこの部分については本書で挙げられた実験結果によって脳に還元できると思われます。

この観点に興味のある方にとっては貴重な内容なのだと思います。

しかし、『意識』を、私とは何か、また私という感覚はどこからくるのか、
という哲学者等が延々と議論してなお解決に至らない本筋と思われる課題については、
本書はほとんど対象としていません。
最終章で若干触れていますが、目新しいものではありませんし、実験はなされていません。

また、意識のコンピュータによる再現(=AI)というホットな話題については、
ほとんど根拠のない楽観的な意見のみです。

こちらの意味での『意識』に興味がある方にとっては有益な情報はほとんど得られません。
私はこちらの意味での『意識』に興味がありましたので、評価を下げています。
本書のテーマが事前にわかっていたら読んでいないと思います。

とはいえ、あくまでも実験を重ねて事実を見出すという科学者としてあるべき姿勢を貫いていること、
またこれで『意識』の残された謎が少し絞り込まれたこと、
更に本書で挙げられた実験結果の医学への貢献は少なくないと思われますので、
その分評価は上げています。

なお、「意識」「自己」についての2017年時点での自然科学における知見は以下の書籍から得ることができます。
脳はいかに意識をつくるのか
神経科学・哲学・精神医療を横断して「意識」「自己」に迫っている素晴らしい本です。

誰もが偽善者になる本当の理由/ロバート・クルツバン



★★★★★

脳のモジュール理論の徹底追求

進化心理学の知見をベースとして、
人間の脳が有する機能の不思議さについて、
脳のモジュール理論だけでどこまで説明可能かを追求した本です。

脳のモジュール理論は他の書籍を読んで知っていましたが、
ここまで徹底してこの理論だけで脳機能を解説している本は、私の読書経験の中で初めてです。

これまで哲学や心理学で難題とされ、膨大な労力を要してなお解決されていない事象について、
脳のモジュール理論は何ら問題なくサクサクと解決していきます。
しかも、進化心理学の根幹である自然淘汰を踏まえての展開ですので、
自然科学の知恵を取り込んでいない他の社会科学系の論理展開よりも説得力は高いと思われます。
そのアプローチが私の好奇心を刺激したのでしょう、一気に読みきってしまいました。

ただ、本書での脳のモジュール理論は、
脳の機能面についてのみ使用されており、脳の構造面についてはほとんど触れていません。
従って、脳が抱える矛盾について、
それらをすべて要素分解し、要素ごとに特化したモジュールがあるという説明も機能面に特化しており、
それを裏付けるための脳の構造面についての言及がほとんどないため、少し乱暴かな、と思いました。

特定の機能には必ず特定の構造(それがどのような形態であろうとも)があるはずですので、
機能と構造が今後マッチングされていくことを期待しています。


あと、持論を否定された学者が、その理論に対して、科学的な反証はできないけど、とにかく否定したい場合に、
如何にしてその理論に欠陥があるように見せかけるか、如何にして一般読者を巧妙に騙しているのか、
に言及している箇所があり、結構面白かったです。

意識は傍観者である/デイヴィッド・イーグルマン



★★★★★

意識できない膨大な潜在意識

脳は進化によって継ぎ足された数多くのモジュールから構成されており、
各々のモジュールが(単独で、協調して、競合して、)機能することで様々なアウトプットが生まれるようです。
それらのモジュールにおいては、顕在意識レベルと潜在意識レベルのものがあるのですが、
顕在意識レベルのモジュールよりも潜在意識レベルのモジュールの方が圧倒的に多いようです。
そして潜在意識レベルのモジュールは、顕在意識の介入を受けないことで(無用なノイズを排除することで)、
モジュールとして果たすべき機能を自律的かつ効率的に行うようにできているようです。
更に潜在意識によって行われていることは、思考や判断の領域にまで及んでいるようです。

従って、人間が通常考えている「意識」というものは、脳の中核というよりも諸々の機能の一つとして考えるべきとのことです。


脳のモジュール理論については、他の書籍を読んで知っていましたが、
脳の研究が進んだことにより、モジュール理論でかなりのことが説明できるようになってきたようです。
また、他の書籍でも脳のモジュール理論について踏み込んだ説明がされていましたので、
この理論は脳科学の世界ではスタンダードになっている、もしくはなりつつあると推察されます。
(社会科学の分野では、この理論は異端のようですが、なぜ異端であるかについての科学的な反証はないようです)


そのうえで、本書の特筆すべき点は、
ある人が犯した罪について、その人にどこまで法的責任を負わせることできるのか、
という問いを発し、その答えについて触れていることだと思います。

ある人が罪を犯した場合、それが顕在意識によるものか、潜在意識によるものか、
また潜在意識によるものでも、顕在意識によって防ぐことができるものなのか、できないものなのか、
更には潜在意識によるものであった場合、再発を防ぐことができるものなのか、できないものなのか、
といったことが脳の科学的な解明が進むにつれて、より適切な判定ができるようになっていきます。
そしてこれらを踏まえて、刑罰を課すか否か、如何なる更生方法が適切か、社会から隔離すべきか否か、などが
科学的に判断できるようになっていくし、そのような方向に司法が進む必要があるとしています。

犯罪被害者の感情やケアといった問題には触れていませんので、十分な解決策とはいえませんが、
犯罪加害者への対処についての科学的アプローチについては興味深いものがあります。
これまで、科学は「なんであるか」を解明するものであり「どうあるべきか」は主題ではありませんでしたが、
領域は限定されつつも、「どうあるべきか」についても科学的なアプローチが可能になってきたようです。


蛇足ですが、著者曰く顕在意識が潜在意識を完全にとらえることは不可能だとのことですので、
仏教をはじめとした様々な内観瞑想が科学的にどれほど効果があるのか、注意しておく必要を感じました。


ここで使用している「科学」「科学的」という用語は、再現可能かつ反証可能なもののみを意図しています。

なお、「意識」「自己」についての2017年時点での自然科学における知見は以下の書籍から得ることができます。
脳はいかに意識をつくるのか
神経科学・哲学・精神医療を横断して「意識」「自己」に迫っている素晴らしい本です。

脳を変える心/シャロン・ベグリー



★★★★

脳の可塑性についての秀逸な文献集

脳には可塑性がある(作り変えることができる)という一点に絞り、一部遺伝子レベルでの成果も含めて、脳の可塑性を認めた研究知見を豊富に盛り込んだ本です。脳の可塑性についての秀逸な文献集といえるでしょう。その意味では高い評価を付けることができます。

但し、脳の可塑性の限界について(例えば臨界期)、また遺伝の強固さ(例えば一卵性双生児の研究)についての知見は全く出てきません。それゆえ脳の全体像は本書では明らかにはなっていません。スティーブン・ピンカーやリチャード・ドーキンスらのウルトラダーウィニストの反論を聞いてみたくなりました。

また、タイトルである、脳を変える『心』ですが、『心』の定義があまり明確ではないことから、あまり深い議論にはなっていません。自らの意思と集中力、適切な方法により脳の特定の配線を変えられることは述べられていますが。。。

更に、副題に、ダライ・ラマと脳科学者たちによる心と脳についての『対話』とありますが、対話という割にはダライ・ラマ氏の発言が期待したほど多くはありませんでした。チベット仏教の智慧と、それに対する脳科学の知見のやりとりをもっと知りたいと思いました。

でも、脳の可塑性についての盛りだくさんの研究成果を知ることができただけでも、本書は価値アリと思います。

脳の呪縛を解く方法/苫米地英人



★★★

本能を自覚し、克服する

本書では、脳科学の知見と言われている、『たった1%でも「誰かから見られているかもしれない」という状況を作り出せば、脳は無意識的に自己規制をするよう働きかける』を引用し、自由を妨げる原因が自己の脳内に本能として存在することを指摘しています。このことを理解し、克服していくことが、呪縛から離れ自由になるために必要であると訴えています。

次に、本能以外にも、著者が知り得たソーシャルメディアや国家・シャドウガバメントの実態を披露しながら、今の世の中が一般市民にとって決して良いものではないとして、これらの制約から自己を切り離し、早く抜け出せと提唱しています。これは仏教の根本思想の一つである『彼岸に渡れ』というところから来ているのだと推察します。
また、今の世の中を作り、動かしている人々が「誰かから見られているかもしれない」という「誰か」になる場合、これらに無意識的に自己規制というかたちで迎合してしまう危険性について警鐘を鳴らしていると読むこともできます。

なお、脳科学者であり仏教者である著者の本ということで、これらの知恵を駆使した脳の呪縛を解くための深い智慧が述べられていると期待していましたが、この点においては物足りなさを感じました。

あと、引用・参照文献が全く記されていません。よって、本書で展開されている内容について、どこまで裏付けがあるのかがわからないのが残念なところと言えます。

人生の科学/デイヴィッド・ブルックス



★★★★★

現時点での最先端の人間科学

現時点での最先端の人間科学について、幅広く、かつ奥深く紹介している本です。

基本となるのは脳科学・心理学ですが、政治学・社会学・経済学などと人間科学との接点にも言及しています。
(なんと、経営学の巨頭であるP.F.ドラッカーやジェームズ・C・コリンズまで登場します)
また、紹介されている人間科学の知見については、出来る限り自然科学で得られたものを紹介しています。
(脳科学・神経科学・遺伝学などの自然科学で未解明なものは、心理学などの社会科学の知見を当てています)
更に、人間科学の知見を、ヒトの一生の様々な段階で必要となる場面に応じて紹介しています。

人間科学に興味をお持ちの方々にとっては欠かせない本だと思います。
また、科学的な知見に裏付けられた自己啓発書としても有益ではないかと思います。


本書の構成は、一般人が最先端の人間科学を理解しやすいようにとの著者の配慮から、
2人の男女が生まれる前~死を迎えるまでのストーリー仕立てになっています。
この表現方法が適切かどうかは、読まれる方々の脳の働きによると思います。
個人的には、最初の頃は「冗長だな」と思っていましたが、
読み進めるにつれ「結構面白い」と思うようになっていきました。

ストーリー仕立てでなく、論理構造的な表現方法のほうが好きな方には以下の書籍をオススメします。
・サンドラ・アーモット+サム・ワン『最新脳科学で読み解く脳のしくみ
・ジョン・メディナ『ブレイン・ルール


また、「人生の科学」という邦題も本書の内容に沿ったものだと思います。
原題の「The Social Animal」よりも良いのではないかと思います。


あと、600ページ弱という大著なので、読むのに苦労しますが、無駄な文章はないと思います。


なお、人間科学に興味を持たれた方々が最初に読む本として本書を選んでよいかどうかは判りません。
個人的には、この類の著作(本書にも紹介されています)をそれなりに読んできたことが、
本書の内容を理解するのに役立っていることは確かです。

参考までに、本書を理解するのに役立つ本を紹介しておきます。
これは本書を読んで更に知りたくなったときに役立つ本でもあります。

・アントニオ・R・ダマシオ(無意識が果たす役割の重要性を提唱)
生存する脳(デカルトの誤りに改題再出版)
無意識の脳 自己意識の脳
感じる脳
・マイケル・S・ガザニガ(脳・心・身体の一体性を提唱)
脳のなかの倫理
人間らしさとは何か?
(以上、本書で紹介されている科学者)

・ジョン・ダンカン(脳科学者・認知神経科学者。ヒトの知能について知りたい方にオススメ)
知性誕生
・スティーブン・ピンカー(進化心理学者。ヒトの進化について知りたい方にオススメ)
心の仕組み
人間の本性を考える

なお、「意識」「自己」についての2017年時点での自然科学における知見は以下の書籍から得ることができます。
脳はいかに意識をつくるのか
神経科学・哲学・精神医療を横断して「意識」「自己」に迫っている素晴らしい本です。

からだの一日/ジェニファー・アッカーマン



★★★

人体の取扱概要説明書

本書は、人体の様々な機能についての最新知見を、幅広くかつ数多く紹介しています。
その分、一つ一つの知見については、ツボは押さえつつも、奥深さは犠牲にしていると思います。

取り上げられているトピックとしては、
・体内時計によって体が支配されていること
・睡眠と覚醒サイクルには個人差(朝方・夜型)があること
・脳はシングルタスク向きにデザインされていること(マルチタスクは不得手)
・日中の時間帯別に能率差があること
・ヒトは体内微生物と共生しなければ生きていけないこと
・腸は第二の脳といわれ、脳からの指示なしで機能していること
・代謝には個人差があること
・午後に睡魔が訪れることと、昼寝をすることが重要であること
・疲労が未だ科学的に理解されていないこと
・慢性的なストレスが脳・身体・遺伝子に悪影響を及ぼすことと、ストレス解消法(瞑想・音楽・社会的絆・笑い)
(不安や恐怖の詳しい研究は本書でも引用されている、ジョセフ・ルドゥーの『エモーショナル・ブレイン』を参照)
・有酸素運動はストレスや不安を取り除く最良の方法。運動によって適した時間帯があること
・運動は代謝だけでなく脳の能力も上げること。学習力と記憶力が強化され、認知症の予防につながる
(運動効果の詳細は本書でも引用されている、ジョン・J・レイティ等の『脳を鍛えるには運動しかない!』を参照)
・笑いが血管の健康に与える好影響は有酸素運動に匹敵すること
・アルコールの代謝率は1日のうちの時間帯でことなること
・男女間の評価や魅力に関する限り、嗅覚は視覚や聴覚と同等に重要な要因であること
・男女間で認知処理方法に差があること
・風邪を治療する薬はまだないこと
・多くの病気は生物リズムの影響下にあること(症状が大きく日内変動する)
・同じ量の薬を服用しても体は時間帯によって異なる反応を示すこと
・健康管理のうえでは、食事・運動・遺伝ですら重要性において睡眠には及ばないかもしれないこと
・睡眠は5つの段階を繰り返すこと。各段階で脳波・体温・生化学・筋肉・感覚活動・思考・意識レベルが変化すること
・運動や自然光を浴びることが質の良い睡眠につながること。逆に酒は質の悪い睡眠につながること
・睡眠不足は集中力・動機・知覚の欠陥を促し、体の免疫反応を低下させ、基本的代謝機能を損なうこと
・脳は睡眠によって自己修復すること
・新しいことを学ぶためには、学ぶ前にも学んだ後にも十分な睡眠が必要であること。但し「睡眠学習」は効果がないこと
・脳は睡眠中に、記憶を新しいものから恒久的なものに変える過程でシャッフルすることで、新たな洞察を生みだすこと
・老化によって体内時計のリズムが狂ってくること。老人が若者より寝るのも起きるのも早いのはこれが原因であること
・睡眠を一度にまとめてとる習慣は現代生活の所産であるということ
・人工の光がヒトの体内時計を狂わせていること。夜間に人工光を浴びると健康面での問題が生じること
・長距離フライトに5年間従事すると、記憶力や認知能力に問題が生じること。交代勤務でも同様に問題が生じること
・徹夜や不規則な夜勤は、労働者への悪影響が引き金になって事故を起こしやすくなること
などを始めとして数多く散りばめられており、トピックごとに最新の研究で得られた知見が並べられています。

例えば、日中の時間帯別の能率差については、以下のようなことが挙げられていました。
・脳の中には体をコントロールしている時計があり、概日リズムと呼ばれている
(概日リズム:サーカディアンリズムのこと。本書内ではこちらの語源だけが記されていましたので付記しました)
・概日リズムには年齢差や個人差があり、遺伝子が関係しているらしい
・概日リズムによって、一日のうちでも脳機能の活動水準が変化する


個々のトピックについて基本的なことから解説しているのは良いのですが、理解するうえで本書は以下の難点があります。

・一日の始まりから終わりまでという順序で章立てされおり、人体機能を体系的に理解するのには苦労すると思います。
(ある人体機能が複数の章にまたがってちらばっています。また同じ章内で別機能が並んでいたりもします)
・章内で異なるトピックに移る際、見出しもなく突然異なるトピックが始まりますので、頭の切り替えに疲れると思います。
・余談が多く、科学的な要点だけを知りたいという方にとっては、無駄な情報が結構あるな、と思われるかもしれません。
・文章が構造的ではありませんので、一読するだけでトピックのポイントを掴むのにも苦労すると思います。
・逆に、この類の書籍をかなり読まれている方にとっては、冗長だと思われるかもしれません。

従って、プレゼンテーションという観点からすれば本書は落第です。
取り扱っているトピックそのものは興味深いものが多いだけに残念です。

脳を鍛えるには運動しかない!/ジョン・J・レイティ等



★★★★

運動と脳の科学的な解説書

本書は、適切な運動が脳に良い影響をもたらすことを科学的に説明しています。

タイトルの「脳を鍛える...」という言葉からは、頭が良くなるための運動についての本であることを連想させますが、
それに割かれているのは1章のみで、他は、脳に何らかのダメージを持つ人の治療・予防への運動の影響の解説です。
(ですので以下のレビューは脳のダメージと運動について書かれている章についてのものです)


運動と脳との関係を要約すれば、以下のようになるとのことです。
・義務ではなくやりたいと思って行う運動が脳に良い影響を与える。
・運動(有酸素運動がよいらしい)がなによりの刺激となって、脳は学習の準備をし、意欲を持ち、その能力をたかめる。
・運動が、ニューロンやシナプス、有益な神経伝達物質や神経栄養因子の生成に関与し、脳の活性化に繋がる。
・運動した後に脳を使うことでより効果的に能力を高めることができる。
・人は狩猟するように進化してきたので、それに逆らわないように運動することが必要である。
(ただ、進化の説明は疑問です。女性は狩猟していませんし、農耕文明以降ヒトは進化の方向を変えたという説もあるため)


これらを基に、脳が受ける様々なダメージ(本書の章立て)と運動との関係について、以下のような内容を提示しています。
・ストレス:ニューロンは筋肉と同様な方法で鍛えられるので、克服可能な軽度のストレスを運動で与えると良い。
・不安障害:運動すると体の筋肉の緊張が緩むので、脳に不安をフィードバックする流れが断ち切られる。
・うつ病:運動を習慣として行っている人はうつ病になりにくい。運動はうつ病治療の他の方法と同様の効果が得られる。
・ADHD:武術のように型の決まった複雑で集中力が求められるスポーツが効果的である。
・依存症:運動は解毒剤であるとともに予防注射にもなり得る。また絶望感や無力感を埋める方法の一つである。
・女性のホルモンバランスの変動:運動は変動のマイナス面を軽減し、プラス面を強化する。
・加齢:運動は老化の進行を阻むことのできる数少ない方法の一つである。

さらに、各々のダメージの解説では、脳の状態と運動について、神経科学の知見を駆使した詳細な解説がなされています。
(運動によりどんな物質が生成され、それが脳のどこに運ばれ、どう影響することで、如何なる効果が得られるのか)
この解説で、運動がいかに脳に良い影響を与えるのかを、正しく理解することができます。

最後に、運動がどれほど健康を支えてくれるかとして、以下を示しています。
心血管系を強くする、燃料を調整する、肥満を防ぐ、ストレスの閾値を上げる、気分を明るくする、免疫系を強化する、
骨を強くする、意欲を高める、ニューロンの可塑性を高める


一方で、各々のダメージを回復するための個別具体的な運動方法については、
各章の終わりと最終章を割いて書かれていますが、科学的な説明と比較して情報量が少ないと思います。
(ベースとなる個体差・ダメージの種類と重症度・治療の段階などの違いによる、適切な運動の手段・量・頻度・負荷など)
運動が脳に良いことは事実ではあるものの、まだ研究は成熟していない、というのが実態のようです。

ですので、本書はあくまでも運動と脳の科学的な解説書であり、実践を促すものではありますが、
本書で挙げられたダメージを持つ方が、本書を読んで独力で最適な運動方法を作成・実践するのは、
容易ではないでしょうし、場合によっては危険でもあります。
本文中でも何度か記されていますが、専門医に相談の上、運動の可否やメニューを決める必要があると思います。


なお、最終章で「運動は脳の機能を最善にする唯一にして最強の手段」という文章が出てきますが、飛躍があると思います。
本書で、運動が脳に良いことを科学が証明したことはわかりますが、唯一・最強であることを証明しているとは思えません。
また、幾つかの章で、脳のダメージを治療するために薬物療法や心理療法などを併用している、という記述と矛盾します。
更に、運動とそれ以外の手法との厳格な比較をしている箇所は見受けられませんでした。
あと、ヨガや太極拳に簡単に触れていますが、様々なリラクゼーション手法、瞑想手法についての言及はありませんでした。
(リラクゼーションの重要性と方法については、グレッグ・D・ジェイコブズ『脳内復活』が役に立つと思われます)

優しく解釈するならば、
「著者が知りえた科学的知見」のなかで「唯一・最強」なのでしょう。
この文章に影響されてか、邦訳タイトルも少しあおりぎみになっています。

知性誕生/ジョン・ダンカン



★★★★★

知性について心理学と脳科学を統合した稀有な本

本書は、ヒトの知性について心理学と脳科学を統合しようと試みている稀有な本です。

まず、知性研究の先駆けであるスピアマンの100年程前の研究成果を振り返ることからはじめています。
そのなかでヒトの知性には以下の2種類のものがあること、
 ・一般因子(g):人が何かに取り組むときにどんなことにでも用いているもの
 ・特殊因子(s):特定の能力に特有のもので、他の活動にほどんど、あるいは全く影響しないもの
活動によってはsがほとんど関与しないものからsがほとんどを司るものまで様々なものがあること、
を紹介しています。

そのうえで対象を一般因子(g)に絞り、この1世紀、gの正体が何なのかについてはずっとおぼろげなままだとして、
それは何か、どこでどのように機能しているのかを探求していきます。

ここで脳科学の知見が登場してきます(但し新皮質に特化)。
脳機能はモジュール構造であることを紹介しつつ、特殊因子(s)が存在することを簡単に確認した上で、
これまでの前頭葉損傷患者の研究や、最近のfMRIを使った研究などを踏まえて、
前頭葉内の2箇所と頭頂葉の一部(多重要求回路と命名)が知性の中心である一般因子(g)を司っているとしています。

そして、知性の中心である一般因子(g)は、
人工知能の知見から、思考の構造化された心的プログラムを組み立てることだけであることを示し、
その枠組みを脳の多重要求回路がどのように機能することで処理しているのかを探っていきます。

そこで、多重要求回路の一部が含まれる前頭葉の研究から得られた知見として、
他の脳領域(機能特化)とは異なり、前頭葉は様々な問題解決に集中するために柔軟に活動することを示しています。
(同じ神経細胞が異なる問題・処理に対しても発火するようです)
またその活動のために、前頭葉は様々な感覚、記憶、特殊因子(s)から入力を処理・統合していることを示しています。

一方で、その集中が、知能や理性に制限を生み出すことがあることも示しています(認知バイアスなど)。


なお著者は、本書で提示した自説を信じつつも、異なる結果が将来出てくる可能性があることを否定していません。
(一般因子(g)と様々な課題との間の正の相関の理由について、他の考え方もありうることを示しています)
自説にこだわり他の説を受け入れない科学者(社会科学者に多い?)もいる中で、この姿勢は素晴らしいものだといえます。


これまで何冊か知能についての書籍を読んできましたが、
IQについては脳科学の最新知見と組み合わせて提示されたものはなく、
また何が知能と呼べるのか、知能とIQは同じなのか、
(脳科学の書籍で読んだものには、知能とIQが同じだとしているものはありませんでした)
知能は1つか複数かといった不毛な議論に終始するものがほとんどでした。
(まさか100年前にスピアマンが結論を出していたことなど知りませんでした)
本書を持って知性の研究が完成したわけではないでしょうけれど(著者も最終章を使ってそのように述べています)、
本書を読むことで頭の中がかなりすっきりしました。


あとタイミングのいいことに、著者のインタビューが掲載されていましたので、リンクを張っておきます。
いつ掲載がネット上から消えるかはわかりませんので、リンクできない場合はご容赦ください。

ダイヤモンドオンライン
「頭のいい人とそうでない人の差はどこでつく?」
『知性誕生』の著書で脳科学の権威が語る“インテリジェンス”の正体とその高め方

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