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伝統・科学・世界を知りマネジメントに活かす

日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

クリエイティブ都市論/リチャード・フロリダ



★★★★★

クリエイティブな人材と環境の関係

前著『クリエイティブ資本論』『クリエイティブ・クラスの世紀』で明らかにした、経済発展におけるクリエイティブな人材の重要性、クリエイティブな人材を引き寄せ、引き止めることの重要性を踏まえて、クリエイティブな人材と環境との関係についての、世界中の都市の比較分析とアメリカでの詳細な分析に基づいた理論を深堀りしている本です。

本著では、各都市で如何なる産業が集積しているのか、そこでのクリエイティブ度合いはどの程度か、といった観点での調査・分析により、マイケル・ポーターの産業クラスター理論をベースとしつつ、著者の専門領域であるクリエイティブ人材の集積のされ方について比較をしています。
これによって前著まででは単に「クリエイティブ・クラス」とひとまとめにされていたものが、産業によって細分化され、その産業と求められるクリエイティブタイプによって整理されています。

更に、アメリカ国内に限ってですが、各都市での産業クラスタ・クリエイティブタイプと、そこに集まる人間の性格との相互関係についても、既存の様々な心理学的な調査結果や新たな調査を踏まえて解き明かしています。
人間の性格の違い(ここではビッグ5といわれる性格の主要5因子:経験への開放性、誠実性、外向性、協調性、情緒不安定性)によって、人が集まる都市が異なっていることや、特定の性格を持つ人間がその都市に引き寄せられ都市の性格が強固になり更にその性格を持つ人間が引き寄せられるというスパイラルが形成されていること、が分かったということです。
これはその都市にある産業に携わりたいという仕事面での欲求だけではなく、自分が幸福になるために自分の性格に適した環境を見つける傾向が人間にはある、という心理学者のマーティン・セリグマンやミハイ・チクセントミハイらの見識と共同研究から裏付けられています。

また、これらのことから人と産業の集積化は益々進んでいくことになり(調査結果で実際にそうなっていることは本書で示されています)、トーマス・フリードマンが提唱する「フラット化する世界」には完全には以降しない、むしろ集積化が進んでいると反論しています。
ただ、著者も「集積化」「フラット化」の単純な二元論ではなく、クリエイティブなものは集積化に向かい、そうでないものはフラット化に向かうという2つの全く異なるベクトルが同時に働いているのではないか、としています。


日本国内についての調査は結構大雑把ですので、本書の調査結果をそのまま国内で活用するのは無理があります。
また、都市に集まる人の性格がそのまま都市の性格になるというのも少し単純すぎます。個人の性格に拘わらず集団としての性格ができてしまうという人類学の研究結果もありますので。
とはいえ、この理論自体が棄却されるものではなく、更に様々な科学分野の知見を統合しつつ、掘り下げていくことで、より磨き上げられた理論になっていくと思います。


あと、前著でもそうでしたが、この理論は企業内でもかなり応用できると思います。企業がクリエイティブになりたければ、クリエイティブな人たちが魅力に感じる施策を他社よりも高く早く推進することが必須である、ということです。
  1. 2009/06/24(水) 11:22:27|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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帝国以後/エマニュエル・トッド



★★

アメリカ嫌いなのはわかるが。。。

強すぎるアメリカに対する通俗的な反米論調とは異なり、アメリカの弱さが故の暴走という独自の観点での論調は面白いと思います。

しかし、「世界の多様性(第三惑星&世界の幼少期)」で見せた広範かつ緻密なデータ分析を踏まえた丁寧な組み立ては本書ではあまり見られません。
他の著作を読んでいませんので、もしかしたら他の著作でのデータ分析を踏まえているのかもしれませんが、それでも本書での展開は「意見」を超えていないような印象を受けます(但し、「文明の接近」ではデータに基づく緻密な分析を踏まえた提言をしていますので、やはり本書には浮いた感があります)。

アメリカに対する気持ちには共感しますし、アメリカの実際の動きについても頷けるものは多いのですが、科学から離れてしまっているのは残念です。

著者解説(wiki):エマニュエル・トッド
  1. 2009/05/06(水) 10:56:23|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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21世紀の歴史/ジャック・アタリ



★★★★

人間の欲望を最大限増幅させた未来シナリオ

これまでの歴史を人間の欲望と、それを表面化した軍事・宗教・市場という観点から整理したうえで、についてこれらを最大限増幅させると21世紀がどうなりそうか、ということを表した本です。

これからの数十年で、人間の欲望の増幅により「超帝国」と「超紛争」が起きるとしています。これについては結構過激な内容で占められており、「???」な部分もあるのですが、人間の欲望のみを増幅させるとさもありなん、という感じです。

そして、これらによる世の中の終焉に対する危機感を基にして(危機感が増幅すればですが)、「超民主主義」が生まれるとしています。これは著者の活動領域でもありますので、結構気合が入っていますが、こちらも人間の持つ真・善・美という本能を増幅させることで出てくるということです。

そのうえで、市場経済と社会的公正の両輪がうまく働くことで21世紀の混迷を乗り越えることができる、としています。

あくまでも未来シナリオの一つではありますが、人間の本性を上手く捉えたものだと思います。また、本書では最近の経済危機の原因でもあるアメリカのサブプライム問題を予測しており(原著初版は2006年)、これが本書の信憑性を高めていると思います。


なお、翻訳が上手くありません(専門用語が難解というのではなく、基本的な日本語レベルの問題です)ので、原著が読める方は原著をお薦めします。

著者解説(wiki):ジャック・アタリ
  1. 2009/04/23(木) 12:43:27|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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クリエイティブ資本論/リチャード・フロリダ



★★★★★

ドラッカーの予測通りになってきた

ドラッカーが随分前に「知識資本」「ナレッジワーカー」の時代になると予測していましたが、本書を読むとまさにその通りになってきていることが分かります。

本書では、クリエイティブ・クラス(ドラッカーのいうナレッジワーカーに相当)が台頭してきており、彼ら/彼女らが最大限に活躍できる環境を整備しているエリアが経済発展を遂げていることを、社会科学の様々な分野の知見を駆使して調査・分析することで説明しています。

また、その環境の必須条件として3つのT、すなわち技術(technology)、才能(talent)、寛容性(tolerant)を挙げています。

社会科学の常として、複雑かつ変化する環境において、全ての要素、その重要性、関係性、因果関係を捉えきれないこと、またこれらの捉え方によって結論が変わることがありますので、本書だけを鵜呑みにすることはできませんが、今後の経済・文化・社会・個人を考えるうえで重要な視点を提供していることは間違いないでしょう。

少しそれますが、本書を読んで感じたことがあります。
それは、本書の視点が企業におけるイノベーションにも適用できるのではないか、ということです。
昨今、イノベーティブな人材、クリエイティブな人材を積極的に求めている企業は多いのですが、そのような人材が最大限に活躍できる環境を整備している、若しくは真剣に整備しようとしている企業がいったいどれだけあるのでしょうか。
いくらこのような人材を集められたとしても、企業内環境が従来のワーキング・クラスをベースとした中央集権的・管理統制的なものでは、クリエイティブであればあるほど逃げていくのだと思います。
更にそのような人たちが企業に対して抱くネガティブな印象が広まっていくと、このような人材を採用することができなくなり、結果としてその企業が衰退していく、ということが起きるのではないか、既に起きているのではないか、また企業側はそのような人たちに対する印象を悪くして採用をあきらめてしまうということも起きているのではないか、そのような二重の悪循環が起きているのではないか、と推察されます。

人と環境をセットで考えていくことの重要性を痛感させてくれる本です。

なお、本書の内容は基本的にはアメリカ国内のものですが、日本では先に出版された「クリエイティブ・クラスの世紀」では、グローバルに視野を広げて展開しています。こちらでは、グローバルレベルでクリエイティブ・クラスの獲得競争が起きており、彼ら/彼女らを惹きつけることができた国・都市が反映しているということを解説しています。併せて読まれることをお薦めします。
  1. 2008/03/19(水) 08:30:35|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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クリエイティブ・クラスの世紀/リチャード・フロリダ



★★★★★

新たなパラダイムシフト

クリエイティブな人たちが国の競争力を決める。
従来アメリカに集中していたクリエイティブな人たちが、最近世界に分散してきている。
これからのグローバル経済の中で勝ち残るには、クリエイティブな人たちを育て、惹きつける施策を早急に打ち出す必要がある。

本書の要旨は以上のようなものです。

これまでも知識労働者、イノベーション、人材獲得競争等々様々な切り口でこの手の本がでていますが、
本書はそれらをクリエイティブ・クラスというキーワードで整理しつつ、
可能な範囲での統計資料を駆使して実証し、かつある程度の処方箋を提示しています。

これからの世の中がどうなっていくのか、またその中でどう生きていくかについて、
しっかりした本を一冊じっくり読みたいという方にはお薦めのものです。

未訳の書籍が数冊あるようですが、翻訳出版が望まれます。
  1. 2008/03/15(土) 18:34:01|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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成功ルールが変わる/ヨーナス・リッデルストラレ等



★★★★★

市場の現実を直視

本書は、市場主義・資本主義が今どうなっているか、
について事実をふんだんに盛り込んでいます。

べき論や特定の思想に基づいて是非を唱える本が多い中、
本書は現実を直視させてくれる希少なものです。

また、様々な学術領域から得られた視点・知見を踏まえているため、
偏らずに現実を見ることをサポートしてくれます。

更に、参考文献が学術書並みに掲載されているので、
更なる学習を進めるうえでも効果的です。

タイトルに比べて、非常に内容の濃い本です。
  1. 2008/03/14(金) 18:27:54|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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市場を創る/ジョン・マクミラン



★★★★★

実態に基づく経済学

保守、リベラルといった主義主張をベースとした経済学の書籍が多い中、
本書は様々な主義主張を横目で見つつ、実際の市場がどうなっているか、という事実に基づいた経済学を展開しています。

また、太古の市場から、最新のネット市場、排出権市場まで幅広く市場を探っている点も価値ありです。

ミクロに視点が及ぶとやや首を捻りたくなる記述も散見されますが、
マクロ経済を見事に現している本ですので、評価を下げるほどではないでしょう。

経済学を初めて学ばれる方や、理屈っぽい経済学に辟易している方にはお薦めです。

著者解説(wiki):ジョン・マクミラン
  1. 2008/03/14(金) 18:19:55|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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文化帝国主義/ジョン・トムリンソン



★★★★

文化帝国主義批判への深い洞察

文化帝国主義または帝国主義についての短絡的な批判やイデオロギーありきの批判が多い中、
本書は問題とすべきものは何か、について丁寧にかつ深く洞察しています。
本書の内容を知ることで、底の浅い言説に振り回されずに済むのではないかと思います。

ただ、本書が本質的な問題を特定することに専念していること、
また、原書初版が1991年であり未だグローバリゼーションに移行し始めた時期であること、
から、これからのグローバリゼーションとどう向き合うかについては書かれていません。
これについては続編である「グローバリゼーション?文化帝国主義を超えて」を読まれることをお薦めします。

なお、訳者あとがきは、せっかくの著者の洞察を矮小化しているためお薦めできません。
  1. 2008/03/14(金) 13:00:40|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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グローバリゼーション-文化帝国主義を超えて/ジョン・トリムソン



★★★★

偏っていないグローバリゼーションの解説

グローバリゼーションvsアンチ・グローバリゼーションといった単純な対立軸で、
また、とかく市場経済に偏り社会や文化を経済に従属させるような書籍や言説が多い中、
文化に光をあて、かつ多元的・相互作用的・動的にグローバリゼーションを分析した本書はそれだけでも価値があると思います。

一方で、安易な相対主義を否定し、それに陥るべきではないことを重ねて指摘しているなど、
著者が真剣にグローバリゼーションと向き合っていることも理解できます。

また、様々な分析を踏まえたうえでのコスモポリタニズムに関する言及についても、
各人が自己実現を追及しながら世界にも目を向けることが大事である、というように、
斬新さや即効性はないものの、浮かれた展開や強引な展開ではないところも、
本書の信頼性を高めていると思います。

ただし、進化理論や社会生物学等への嫌悪感が随所に漂っています。
人間についての様々な自然科学の知見に基づいて人間の特性を更に見極めれば、
より実現可能性の高い方策を検討することができると思われることから、多少残念な気がします。
  1. 2008/03/14(金) 12:58:49|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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グローバリゼーションを擁護する/ジャグディシュ・バグワティ



★★

やりすぎ

確かに本書で記されているように根拠のない浅薄な議論に終始する団体も多いでしょうし、
そのことで自由市場経済から隔離され貧困から脱することができない民が数多くいることも事実でしょう。

しかし、グローバリゼーションを「べき論」として展開し、グローバリゼーションに従うべきだという著者の展開はやりすぎではないかと思います。
それが、グローバリゼーションのポジティブな要素と反グローバリゼーションのネガティブな要素を比較してグローバリゼーションの正当性を論じ、
更に、多国間の自発的な相乗効果によって生み出されるものではなく、アメリカ主導のものをグローバリゼーションとして擁護するかのような内容であればなおさらです。

グローバリゼーションが現在のように進んでいる背景には確実にメリットがあるはずなのですが、
著者のような展開をすればするほど、かえって反グローバリゼーションへの掛け声が強くなるのではないか、と危惧します。

また、反グローバリゼーションへの批判はあっていいのですが、
グローバリゼーションのあり方や、グローバリゼーションそのもののポジティブな要素とネガティブな要素を冷静に分析し、
様々なグローバリゼーションへの選択肢や効果的方法を提示することのほうが重要でしょう。

経済学者にはもっと本質的な研究・検証をしてもらいたいと思います。
  1. 2008/03/14(金) 12:54:53|
  2. 空間軸(グローバル化等)
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プロフィール

I am that I am.

Author:I am that I am.
誇りある日本の復活を望む一日本人

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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