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伝統・科学・世界を知りマネジメントに活かす

日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

欲望について/ウィリアム・B・アーヴァイン



★★★★

欲望という本性の扱い方

人間が持つ欲望が暴走することの愚かさ、その制御の難しさ、そのうえでの扱い方、の3部構成で、欲望について丁寧に、かつわかりやすく解説しています。

欲望の暴走の愚かさについては、人間の欲望には際限がなく、かつ欲望を満たすとそれに慣れてしまうので始末に終えないということです。
また、欲望は無意識の領域から生まれてくるので自覚なく欲望を満たそうとするとのことです。更に、無意識から出てくる欲望を思考が意識的に増幅し、それを論理的に叶えようとするとのことです。

欲望の制御の難しさについては、最新の進化学・脳科学の知見を踏まえて解説しており、どれだけ制御が難しいかが、上手く表されています。
但し、著者の造語で語られていますので、進化学・脳科学で使われている用語・体系との整合性は取られていません。これらの学問領域での用語・体系で知りたい方は、本書の参考文献でも提示されている、アントニオ・ダマシオ、ジョセフ・ルドゥーらの著作を読む必要があります(とはいえ、私の理解では、著者の述べていることは比較的容易に進化学・脳科学の用語・体系と整合を取ることは可能だと思います。そうであるだけに、これらの学問領域で普通に使われている用語・体系を何故取り込まなかったのかが不思議ではあります)。但し、最近の似非脳科学本と比べれば本書は極めてまっとうな解説をしています。

欲望の扱い方については、主だった宗教、哲学等を紹介して、その中で自分に合ったものを探して実践するようアドバイスしています。
あくまでも概要の紹介ですので、各々に精通している方からは物足りなさや解釈の違いを指摘されるのだと思いますが、それでも役には立ちます。

哲学者には珍しく、平易な文章・用語を使用していますので、読むのに苦労することはないと思います。

上記のようなかたちで欲望システムがつまびらかになっています。

なお、本書では明記していないのですが、欲望がこのようなものであれば、マズローの欲求段階説が怪しくなってきます。
マズローは欲求に段階があるとし、下位の欲求が満たされなければ上位の欲求にはいかない、そして最上位の欲求が自己実現だとしています。しかし、本書を踏まえれば、下位欲求は最後まで満たされることはなく、それ故に自己実現欲求には到達できないことになります。
多分ですが、自己実現欲求に到達するためには、下位欲求を満たそうとするのではなく、自己実現欲求の実現を目標に置き、下位欲求をある程度制限していく必要があるのだと思います。
  1. 2009/04/26(日) 15:30:40|
  2. 科学哲学
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解明される意識/ダニエル・C・デネット



★★★★★

自然科学と哲学の統合

デネットは、哲学者の中では自然科学を真剣に取り込んだうえで、
人間とは何か、を哲学している数少ない哲学者です。
哲学者の中には哲学を哲学するというよくわからない人も多いのですが、
デネットは本当に哲学しています。

本書では、当時の最新自然科学の知見を前提として、
意識について真っ向から取り組んでいる重要な書籍です。

ドーキンスのネオ・ダーウィニズム(進化論)を前提として取り込み、
ニューラル・ネットワーク(脳科学)の知見を活かし、
ハワード・ガードナーの多重知能理論(認知科学)をも包含して、
多元的草稿論について論理的に明快な解説を展開しています。

600ページに渡って展開していますので、
読むのは大変なのですが、論理構成がしっかりしていますので、
時間をかければ理解できるないようです。

意識について理解を深めたい方にはお薦めです。

また、人間の脳がどう進化してきたか、それをどう上手く使うべきか、
については「自由は進化する」がお薦めです。

なお、「意識」「自己」についての2017年時点での自然科学における知見は以下の書籍から得ることができます。
脳はいかに意識をつくるのか
神経科学・哲学・精神医療を横断して「意識」「自己」に迫っている素晴らしい本です。

著者解説(wiki):ダニエル・デネット
  1. 2008/03/09(日) 11:38:39|
  2. 科学哲学
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ダーウィンの危険な思想/ダニエル・C・デネット



★★★★★

進化論を知るための必読書

進化論を最新の自然科学の叡智を踏まえて、みごとに論理的に体系化した本です。
本書を読んでなお「神の存在」「人だけはインテリジェントデザイン」
と信じて疑わない人は、既にイデオロギーの虜になっているのだと思います。

本書から受け取った知恵の中で、気に入っているものの一つに次のものがあります。

**********************************************************

第13章 ダーウィンに心を奪われて 1.知能における言語の役割

生成評価の塔
この「塔」は、階が新しく出来上がるたびに、
生体に、ますますよい手をより効果的に見つけられるような力を、
高さに応じて順にさずけていく。

ダーウィン型生物⇒スキナー型生物⇒ポパー型生物⇒グレゴリー型生物

**********************************************************

人はこのような進化を遂げてきています。
これに基づけば、
行動科学はスキナー型生物に適用できる学問となります。
勿論、人もスキナー型を内包しているので行動科学の効果はゼロではありませんが、
グレゴリー型生物である人には行動科学も限界があることがわかります。

行動科学者、心理学者、社会学者は進化論を十分に理解した上で、
建設的な批判を行ってもらいたいと思います。
なお進化論については、以下の科学者が切れ味の良い知見を提供してくれます。
リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」など
ニコラス・ハンフリー「獲得と喪失」など
スティーブン・ピンカー「人間の本性を考える」など
マット・リドレー「やわらかな遺伝子」など

著者解説(wiki):ダニエル・デネット
  1. 2008/03/09(日) 11:35:37|
  2. 科学哲学
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「志向姿勢」の哲学/ダニエル・C・デネット



★★★★★

思考する際の条件

物事を考える際に、これほどまで思考しなければならないのか、
ということを思い知らされました。
最近、論理的思考の書籍が結構出版されていますが、
本書を何度も読んだ方がはるかに役に立つでしょう。
また、本書を理解しようと努力するだけでも思考回路がフル回転します。

なお、脳科学・進化理論との融合については、
著者の「ダーウィンの危険な思想」「解明される意識」「自由は進化する」
で試みられていますので、そちらもお薦めします。
さらに、
リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」「延長された表現型」「盲目の時計職人」
スティーブン・ピンカー「心の仕組み」「人間の本性を考える」
アントニオ・ダマシオ「生存する脳」「無意識の脳 自己意識の脳」「感じる脳」
を読むと理解が深まります。

あと、訳が悪いのは、
訳者がデネットの哲学を十分に理解していないことが原因だと思われます。

日本の学者で本当に哲学している人はほとんどいません。
私の知っている限りでは佐倉統さんぐらいです。

著者解説(wiki):ダニエル・デネット
  1. 2008/03/09(日) 11:29:51|
  2. 科学哲学
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意識する心/デイヴィッド・チャーマーズ



★★★★

意識と神をつなげるための膨大な理論証明

著者は、どうしても精神がどこかに実在し、それが神とつながっていることを、
証明したいようです。
そのために、あらゆる思考法を駆使して証明しようとしています。

本書は哲学書としては第一級のものであり、
自分の思考を訓練するためには非常に優れた教材となります。
しかし、前提に答えありきの論理展開ですので、
それを踏まえて読まれることをお薦めします。

著者解説(wiki):デイヴィッド・チャーマーズ
  1. 2008/03/08(土) 18:13:46|
  2. 科学哲学
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心脳問題/山本貴光等



★★★★

ある程度は踏み込んでいるが

日本で、心脳問題をまじめに哲学している稀有な本だと思います。
日本の多くの社会科学者よりは、ずっとまともだと思います。
また、巻末の作品ガイドは初学者にはお薦めだと思います。
これでエセ心理学、エセ脳科学、エセ遺伝学が駆逐されることを願います。

しかし、もっと突っ込んで欲しかった。
自然科学にどっぷり浸かったうえで、哲学をしてほしかった。
V.S.ラマチャンドラン、アントニオ・ダマシオは登場しますが、
ジョセフ・ルドゥー、スティーブン・ピンカー、マット・リドレーらは出てきません。
さらに、この問題の哲学界での急先鋒である、ダニエル・デネットも出てきません。
彼等を適切に批評できなければ、せっかくの挑戦も自己満足に終わってしまいます。

また、この問題の行く先にはネオ・ダーウィニズムがあります。
ここまで含めないとこの問題は語りきれません。
ということからリチャード・ドーキンスをはずすことはできません。

次作に期待します。
  1. 2008/03/04(火) 19:21:11|
  2. 科学哲学
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プロフィール

I am that I am.

Author:I am that I am.
誇りある日本の復活を望む一日本人

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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