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伝統・科学・世界を知りマネジメントに活かす

日本の伝統・ヒトの自然科学・現在の国内外情勢・マネジメントなどに関する、ブックレビュー

世界の多様性/エマニュエル・トッド



★★★★★

計量人類学

本書は「第三惑星」「世界の幼少期」という著者の過去の著作を再掲したものです。

「第三惑星」では、人類の多様性を8つの家族構成の違い(親子関係や兄弟関係の従属性や平等性など)で分類可能とし、それらの特徴について述べています。
様々なイデオロギーが世の中にありますが、著者は各々の家族構成が特定のイデオロギーを自然発生的に生み出したと結論づけており、イデオロギーが家族構成を作り出したわけではなく、またイデオロギーが家族構成を無視して広がるわけではないことを解説しています。
また、これまでの人類学や政治学では、家族構成という人類の基本的な最少集団単位を重視してこなかったが故に、人類の多様性やイデオロギーの発生メカニズムを見極められなかった、としています。
但し、何故8種類の家族構成の違いが生まれたか、また定着したか、については、本書では「偶然」としています。ただ、この結論については、著者の同僚からの建設的な批判により、その後の研究で解き明かそうとしているようです。


「世界の幼少期」では、「第三惑星」の分析を踏まえて、家族構成の特徴(親子の関係、夫婦の関係など)により、当該エリアの経済の発展の仕方が異なること、また経済の発展が結婚年齢の上昇、識字率の向上、死亡率の低下、出生率の低下といった流れの結果として起きる、としています。
また、経済学における経済発展の理論は貨幣換算できるものだけを取り扱っており、それだけでは発展の因果関係を見誤るとしています(それでも取り扱うようになっただけましではありますが。アンガス・マディソンが過去1000年以上の経済データを収集・分析するまでは、経済学にはデータに基づく経済発展の理論はありませんでした)。
人類学における著者以外のデータ分析については不勉強なのでよく知りませんが、経済学においてはいろいろと経済発展のパラメータを特定しようという動きが一部にありますので(ウィリアム・バーンスタイン「豊かさの誕生」、ダイアン・コイル「ソウルフルな経済学」など)、これらと統合できれば、更に経済発展を含めた人類の発展のメカニズムが明らかになると思います。


何れのものも、広範かつ膨大な情報の分析に基づいた説ですので、検証可能性があるということから「科学」といえるでしょう。データに基づかない理論(仮説)も科学にとっては大事なものなのですが、理論という名の妄想もかなり多いですので、この手の著作は結構ありがたいと思います。

著者解説(wiki):エマニュエル・トッド
  1. 2009/05/05(火) 10:27:39|
  2. 人類学
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多文化世界/ヘールト・ホフステード



★★★★★

国別の文化の違い

IBMの全世界(50カ国以上)のオフィスを対象として国別の文化の違いを抽出した本です(原著初版1991年)。

上記の調査結果と、関連する様々な調査結果を踏まえて、以下の4つの次元で国別の文化の違いを表すことができるとしています。

・権力格差の大きさ(日本は中程度)
・個人主義⇔集団主義の程度(日本は中程度)
・男性らしさ⇔女性らしさの程度(日本は最も男性らしさが高い)
・不確実性の回避の強さ(日本は高程度)

また上記視点が西洋的であり、東洋的な視点が欠けているのではないか、として、別の調査によって以下の次元も抽出しています。
・徳の高さ(日本は高程度)

更にこれらの次元を組み合わせながら、国毎の特徴を整理しています。

そのうえでマズローやハーツバーグ等の欲求理論について、文化が異なる国では欲求因子の重要性は自ずと異なるとし、彼らとて自身の属する文化の影響を強く受けていることを指摘し、闇雲に活用すべきではないと警鐘を鳴らしています。


加えて、組織文化についても解説しています。

組織文化については、別の調査によって以下の6つの次元を抽出しています。

・過程志向⇔結果志向
・社員志向⇔仕事志向
・所属主義的(組織に存在理由)⇔専門的(職種に存在理由)
・開放的⇔閉鎖的
・コントロールが緩い⇔きつい
・現実主義的⇔規範的

またこれらの次元の内、組織モデルそのものに起因する要素が、ミンツバーグの提唱したマネジメント理論における要素と整合していることを見出し、大きくアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国の文化の特徴によって類別できることを指摘しています。

更に組織文化を変革する際の留意点を指摘しており、昨今の企業変革に活用できる知見も提供しています。本書には引用されていませんが、エドガー・シャインが提唱している組織文化変革の方法に近いものがあります。

但し、国別の文化の多様性が価値観の違いであるのに比べて、組織別の文化の違いが価値観が生み出す慣行の違いであり、組織間の違いは表層的なものである、と結論付けていることについては、組織間の違いを過小評価していると思われます。

以下のような企業のの生成過程が調査に盛り込まれていないので、次元として現れてこなかったのだとも思えます。

・価値観と慣行は一方通行ではなく、価値観が慣行を生むと同時に、慣行が価値観を生むことはありえるでしょう(慣行が価値観を生まなければ組織のハード面を変えても文化は全く変わらないことになる)。

・国別の文化多様性が上記次元で説明できたとしても、それはあくまでも一般的なものであり、その国に住んでいる人たちの個人差は十分にあり(例えば、IQの分散は、人種間の違いよりも人種内の個人差の方が大きいという研究結果がある)、企業が人を採用・評価する際には自分たちの文化に適合する者をより優遇することから、同じ国、同じ文化においても企業間で文化が異なることは十分にありえるでしょう。

・組織は市場競争下において独自化・差別化しようと必死になっていますので、競争相手と違うことを少しでも行おうとし、その結果として文化が異なってくることも十分あり得るでしょう。

・また最近のM&Aにおいて、同一国内・同一産業内においても、成否を決める重要な要素の一つに文化の不整合が挙げられていることから、確実に文化差はあるでしょう。

著者が述べているように、組織別の文化差は国別の文化差よりも小さく、また組織別の文化差は、年齢・学歴・性別の違いが大きい、ということは確かにあるのでしょうが、上記からは更に様々な違いが出てくるでしょう。


以上のように、組織間の文化の違いについては課題と思われるものがあるものの、国別の文化の違いについては、非常に有益な視点を与えてくれますので良書であることには間違いありません(ので、評価は下げませんでした)。

  1. 2008/05/25(日) 18:15:58|
  2. 人類学
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さまよえる近代/アルジュン・アパデュライ



★★★★★

社会科学と自然科学の統合をみた!

本書は、現代におけるグローバル、ナショナル、ローカルの力学を、
5つの次元(民族・メディア・技術・資本・観念)の間での動的均衡として説明しています。

これまでの社会科学では、現象の類似性や特殊性だけを取り上げたもの、強引に統計処理したものが多かったのですが、
本書は、その奥にある力学を物理学の知見も参考にしながら解説しています。
更に、過去の社会科学の成果をも新たな視点で説明し直しています。

また、著者は直接的には触れていませんが、
本書が進化心理学、進化論などの自然科学(特に人類進化)と違和感なく整合しています。
進化理論の親分ともいえるリチャード・ドーキンスは30年前に「利己的な遺伝子」で、
人類の2つの進化要因として遺伝子(ジーン)と環境(ミーム)を提唱しました。
ジーンは、自然科学で最近のゲノム解析に見られるような進展(善悪は別)がありましたが、ミームへのアプローチはほとんどありませんでした。

しかし、本書をミームの構造・力学として見ると見事に統合理論が出来上がります。
社会科学の世界でこれほど自然科学と調和する書籍を他には知りません。

世の中を冷静に見つめるための必読書です。

なお、自然科学で本書と整合するものには、
「利己的な遺伝子」(リチャード・ドーキンス)、
「人間の本性を考える」(スティーブン・ピンカー)、
「やわらかな遺伝子」(マット・リドレー)、
「自由は進化する」(ダニエル・デネット)、
「感じる脳」(アントニオ・ダマシオ)があります。
彼等は、「育ち」論者が忌み嫌うようなものではありませんので、
建設的に読むことができます。
  1. 2008/03/09(日) 14:46:44|
  2. 人類学
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I am that I am.

Author:I am that I am.
誇りある日本の復活を望む一日本人

マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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