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Rising Sun

Author:Rising Sun
リヴァタリアン


マネジメントは、ビジネス書の知識を得るだけでは上手くいかないでしょう。

日本の伝統から日本ならではの価値創造の源泉を知り、最新の自然科学からヒトの何たるかを知り、また科学的思考力を磨き、国内外情勢から立ち位置を知ることが重要だと思います。

勿論、基本はP.F.ドラッカー。

このブログでは、私が読んだ上記に関する書籍についてのレビューを紹介しています。

ご参考になれば幸いです。

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経団連と増税政治家が壊す本当は世界一の日本経済/上念司



★★★★

いつの世でも未来創造を阻むのは既得権益と岩盤規制

アベノミクスでのマクロ経済政策(金融緩和と財政出動)は正しいものだと言えます。
それを阻んでいるのは財務省と財務省につるんでいる国会議員とメディアです。

まず、本来統合政府のバランスシートで見れば国の財政は健全です。
それにもかかわらず、負債のみ声高に煽って国民を騙して不安に陥れ入れています。
財政は健全ですので増税は全く必要ではありません。
仮に必要だとしても、逆進性の強い消費税は相応しくありません。

次に、日本国債はまだまだ発行しても全く問題はありません。
国債は円建てであり、供給が需要に追いつかず、国債市場からも信頼されています。
それにもかかわらず、借金が増えたら財政破綻だと国民を騙して不安に陥れています。
国債は円建てですから、万が一償還ができなくなることがあってもお札をすれば済むだけです。

更に、財政出動しても全く問題はありません。
上記の通り、国の財政は健全であり、国債を発行しても問題ないのですから。
ただし、以前のような、
政官業癒着の地元利権に基づく不要不急のハコモノへの財政出動は論外であり、
既得権益と岩盤規制を強化するだけで、全く逆効果です。
財政出動すべき先は以下のものだと思います。
・高度人材育成への投資(但し投資すべき人材の資質を厳格に評価することが前提)
・自然科学・先進技術分野の研究開発への投資(無能な官僚が余計な介入をしないことが前提)
・国防力の盤石化への投資(国家戦略・国防戦略・部隊編成戦略の再構築が前提)
・自然災害対策への投資 (自然環境との調和を図ることが前提)など

ただ、金融緩和と財政出動は、
過去20年間の間違ったマクロ経済政策を正すためのものであり、
また落ち込んだ日本経済を下支えするものであり、
日本経済を真に未来に向けて盤石なものにするわけではありません。
(上記で挙げた財政出動先は日本の未来の基礎を固めるものではありますが)

日本経済を真に未来に向けて盤石なものにするためには、
民間企業による創造的破壊が必要です。
ここでの政府の役割は国家安全保障を盤石にした上での徹底的な規制緩和しかありません。
政府がミクロ経済政策で市場に介入して成功した例はありませんので。

しかし、既得権益と岩盤規制に守られた既存大企業は、
創造的破壊よりも自己保身のために既得権益と岩盤規制をより強固にして、
新たな企業による創造的破壊を阻もうとします。
そして既得権益と岩盤規制をより強固にするために政治家や中央官僚と結託します。
昔からある政官業の癒着というものです。
とりわけ、国家財政を握っている財務省と財務省よりの政治家との結託はよりうまみがあります。

さらに、これらの中には媚中媚韓の与党政治家と結託して、
日本の安全保障を脅かしている存在もあります。
金儲けのために、反日国家に投資し、技術を提供したり
日本人の賃金を上げないように反日国家の国民の雇用を増やすことによってです。

少なくとも一般消費者の目に見える範囲では、
日本発の創造的破壊といえそうな産業・デファクトスタンダード・サービスは生まれていません。
ECはAmazon、スマホはApple、ネットはGoogle、SNSはFacebook、Twitter、Lineなどなど、外国発ばかりです。
また、最近急成長してきた日本企業もありますが、
その中には顧客すら騙すような金儲け至上主義で、とても未来創造とは言えない企業も目立ちます。

タイトルにあるように「本当は世界一」かどうかはわかりませんが、潜在力は十分にあると思います。
マクロ経済政策を確実に行い正常軌道に戻したあとは、
日本の安全保障を盤石なものにすることを前提として、
徹底的な規制緩和で日本発の創造的破壊を促す環境づくりが必須です。

なお、★1つ減らしたのは、著者が本書冒頭で誉めそやしている会社に、
消費者センターに相談するくらいの酷い目に会い、その後この会社とは完全に縁を切ったからです。

追記(20180318)
財務省がやらかしましたね。
これを機に財務省解体まで持って行って欲しいですね。
現在所管している財産管理機能だけ残して、
税金と社会保険料を併せて徴収する歳入庁を切り出すことで、徴収率向上に集中させ、
各省庁に予算配分する主計局の機能を内閣府に移管して政府主導を強めるなど、
財務省の巨大な権力を省益ではなく国益に資するように、
根本的に変えるチャンスではないでしょうか。

「年金問題」は嘘ばかり/高橋洋一



★★★

老後のために

年金保険の基本と利権構造がよく分かりました。
老後を安心して過ごすためには、
個人としては、
年金保険料を払い続ける事、
金融機関に騙されずに不足分を正しい金融商品で補う事、
国としては、
歳入庁を創設して年金保険料を100%徴収する事、
GPIFを解体する事、
税投入するのであれば所得税から投入すべきである事、
が大切だということがわかりました。

なお、
年金保険は40年間支払って20年間受け取る、
受取額は支払期間の平均給与の4割程度である、
ということですので、高給取りは別として現行制度では老後への不安が払しょくできるとは思えません。
数理的には「破たん」していなくても生活水準的には「破たん」しているのではないでしょうか。
老後への不安が払しょくできるような制度改正がなされない限り、
たとえ、アベノミクスで金融緩和や財政出動がなされ、給与アップにつながったとしても、
給与アップがモノへの消費につながるのではなく、idecoやnisaを通じた金融商品購入に投じられるような気がします。
これでアベノミクスが狙っている経済成長につながるのかどうか、よくわかりません。

ここまでが、年金が保険であるという前提での著者の解説に対するレビューです。

一方で引っかかるのは、年金保険と生活保護との関係です。
年金は40年間支払い続けなければ受給できないのに対して、生活保護は困れば受給できます。
また年金は支払期間の平均給与の4割程度が支給されますが、生活保護がそれを上回る場合があります。
さらに、生活保護は、加えて居住費全額支給、医療費全額支給などの恩恵があります。
年金保険と社会保障は異なるものだといっても、お金に色はつきませんので、この格差は極めて問題が大きいと思います。
恩恵も含めて生活保護のレベルを国民年金レベルに引き下げるか、
国民年金のレベルを生活保護レベルに引き上げるか、
両方を行うことで格差を解消するか、いずれかにしないとモラルハザードが起きるでしょう。

財源が必要な場合には、
経済成長による税収自然増、
本来支給すべきでない(在日外国人を含む)人への支給停止、
生活保護世帯の医療費一割負担、ジェネリック医薬品の強制使用、
生活保護世帯の空き家利用による住居費抑制、などから捻出すべきでしょう。

経済用語 悪魔の辞典/上念 司



★★★★

エッジの効いた経済用語解説

リベラル、隠れリベラルの言動に振り回されたくない方にお勧めの本です。
特に、最近の大手メディア、各種団体、学者、評論家等々の様々な言動が、
当に日本人の利益になるためのものかどうかを判断するうえでは有益な内容だと思います。

また、自分自身でリベラルに洗脳されていないかどうかをチェックするうえでもお勧めの本です。

個人的には、「似非ケインジアン」の解説は役に立ちました。
著者の経済で読み解くシリーズで扱われているケインズ理論と、
いわゆるケインジアンと言われている経済学者が解説しているケインズ理論に、
かなりの乖離があり違和感を覚えたのですが、本書で解決しました。
本来金融緩和&財政政策セットのケインズ理論から、
財政政策だけ意図的抜き出して、ケインズ理論をリベラル化し、
それを信奉しているのがリベラルの経済学者(=似非ケインジアン)だということがわかりました。
因みに彼らのケインズ解説書は何冊も読みましたが(だから疑問がわいていたのですが)、
リベラル化されたケインズ理論だけが正しく、他は間違っているという答えありきのものがほとんどです。
オーストリア学派(ハイエク等)やシカゴ学派(フリードマン等)とケインズ理論の比較本については、
少なくとも私が読んだ本は全て答えありき、しかも答えありきが容易にわかってしまう稚拙なものばかりでした。
そして、私の中ではケインズは有効性が疑問視される公共投資を訴えている学者だと思い込んでいました。
その間違った思い込みから、本書・著者が解放してくれました。良かったです。

経済学と人間の心/宇沢弘文





期待はずれ

人間を無機的に捉えて構築されたこれまでの各種経済理論に対する反省の下に、
近年、行動経済学、神経経済学など人間を有機的存在として捉えた経済理論が発展しつつあります。
タイトルから、経済学と人間の心を融合した新たな経済理論を想像して読みましたが、期待はずれでした。

第一部のリベラリズムの思想と経済学では、著者の学者人生を振り返るにとどまり、何を伝えたいのかさっぱりわかりませんでした。
第二部以降は、著者持論の社会的共通資本の解説なのですが、既に著者の「社会的共通資本」を読んでいましたので、特段目新しいものはありませんでした。

社会的共通資本/宇沢弘文



★★★

主旨はよいが、運用が。。。

人間が人間らしく尊厳を持って生きていくために必要不可欠な要素を社会的共通資本として、
資本主義(利潤)でもなく社会主義(官僚)でもなく、当該分野の専門家の知識や知恵と倫理で守っていこうという論旨です。
代表例として掲げられた、農業&農村、都市、学校教育、医療、金融、地球環境それぞれに概論が示されており、
一読の価値はあると思います。

但し、これらの制度の運用を考えたときに、果たして実現可能なのかどうかは疑問です。
当該分野の専門家の知識や知恵と倫理で管理すべしと述べられていますが、
既存の業界団体を頭に浮かべた途端、無理なんじゃないかな、と思わざるを得まえん。
逆に様々な業界団体が自らを社会的共通資本だと自認し、本書があざとく利用されてしまう危険性もあるでしょう。
制度の運用面も正しく設計しておく必要があると思います。

始まっている未来 新しい経済学は可能か/宇沢弘文&内橋克人





新しい経済学が見えてこない

フリードマンが提唱した市場原理主義と、それを活用したレーガン、サッチャー、小泉&竹中に対する痛烈なバッシング本です。
バッシングは構わないのですが、彼ら/彼女らの改革の負の部分のみ取り上げて論じるのは学術的な態度とは言えないでしょう。
更に、登場人物の個人的なエピソードの挿入でバッシングを煽っているのもおかしなことだと思います。
学者なら論文で勝負すべきでしょう。

それはそうとして、副題である「新しい経済学は可能か」についてですが、それに言及した箇所が全く見当たりません。
バッシングを踏まえて新たな経済学の方向性を見出しているようにも思えません。
宇沢氏の社会的共通資本の話はでてきているのですが、経済全体を敷衍するような経済学理論はでてきません。
副題につられて読んでみましたが、副題についての知見は全く得られませんでした。

経済成長神話の終わり/アンドリュー・J・サター



★★★

経済人から市民へのシフト

本書は、永遠の経済成長が神話であること、
また経済成長が仮に続いても、その利益は国民には広く還元されないこと、
を多数の統計データを踏まえて提示し、警鐘を鳴らした上で、
「滅成長」による「繁栄」が可能であることや、その骨格を提示しています。
(地域振興、社会福祉、環境保全、医療、子育て、教育など)

そして、「滅成長」による「繁栄」を実現していくためには、
国民一人ひとりが、政府・行政・学界・メディアがドグマとしている経済成長とその恩恵に疑問を持ち、
組織に飼いならされた経済人から、地域のコミュニティを構成する市民としての自覚を持ち、
様々な意見具申、議論、行動を起こしていくことが重要である、という主旨だと思います。

「滅成長」による「繁栄」策として著者が提示している内容には、取捨選択や濃淡があり、
全面的に賛同することは出来ない部分もあるのですが、納得できる部分もあります。



この世で一番おもしろいマクロ経済学/ヨラム・バウマン



★★★★

わかりやすい入門書

この世で一番おもしろいかどうかはわかりませんが、マンガで平易にマクロ経済学を解説しています。
また、様々な経済思想の対立を極力排して解説していますので、偏らずにマクロ経済学を理解できると思います。

主要な経済学者・経済思想からマクロ経済学を学ぼうとするとどうしても、そのバイアスにとらわれてしまいます。
ですので、本書を先ず読んで、それから主要な経済学者・経済思想を読まれるほうがよいと思います。
(如何なる経済思想も、それが生まれた時代や場所や現象に基づいていますので、普遍的ではありません)


また、主要な経済学者・経済思想についても、比較しながら学んだ方がよいと思いますので、
池上彰さんの『池上彰のやさしい経済学』を本書の次に読まれることをオススメします。

主要な経済学者・経済思想の信奉者たちは、
自身が信奉する経済思想の利点と、それに反する経済思想の欠点を比較して、
自身が進歩する経済思想が正しい、といったおよそ科学とは思えないことをよくやっていますので、
(特に、ケインズ信奉者がミルトン・フリードマンを攻撃するときに目立ちます)
特定の経済学者・経済思想とは縁の無い人が解説した本が役に立ちます。


そのうえで、
アダム・スミス、カール・マルクス、フリードリヒ・ハイエク、ジョン・メイナード・ケインズ・ミルトン・フリードマンなど、
を読まれると理解が進むと思います。
それも、できれば本人の著した本がよいと思います。
なぜならそれらの信奉者たちが書いた本は、本人の思想とはズレていることが少なくないからです。


更に、複雑な経済現象を単純化せずに複雑なまま捉えようとする、複雑系経済学も発展しつつあります。
これまでの経済学は、複雑な経済現象の流れの断片を切り取って分析しようとするもののようですが、
複雑系経済学では、その流れそのものを分析しようとするもののようです。
複雑系経済学を学ぶためには、以下の書籍が有益だと思います。

・デイヴィッド・オレル『なぜ経済予測は間違えるのか?
・W・ブライアン・アーサー『収益逓増と経路依存

なぜ経済予測は間違えるのか?/デイヴィッド・オレル



★★★★★

役に立つ新しい経済学への変革の提言

経済学の書籍を何冊も読んだ印象として、経済学は科学というよりイデオロギーだと思うようになりました。
その中で、中立を装いながら特定のイデオロギーに誘導するような書籍に何冊も出会いました。
また、経済学が科学を装うために、無理矢理ニュートン物理学の真似をしているという話も読みました。
さらに、新しい考え方(複雑系)などを経済学に取り入れようとすると、大きな反発を招くという話も読みました。

最近、行動経済学が登場し、修正されつつあるものの、本質的な部分の抜本的な変革には繋がっていないように思えます。

ただ、それでは経済学はどうあるべきか、どうすべきか、について整理された本をこれまで見受けませんでした。
本書は、これらについて本格的にメスを入れた初めての本ではないかと思います(私の知り得る限りですが)。

ネイチャー誌に載った「経済学は科学革命を必要とする」という記事の、
「私たちは古典的な経済学と手を切り、まったく別の道具を開発する必要がある」
という提言を受けて本書は書かれています。

まず、新古典派経済学の基本中の基本である、需要供給曲線を否定します。
この曲線はニュートン物理学を真似て作られているため、還元主義をベースとし、不変要素があることを前提としています。
しかし、実際の経済は気象と同様、様々な要素(社会的因子・経済的因子・心理的因子)が複雑に絡まっており、
単純な法則に還元することはできないため、創発的現象として経済を捉えるべきだとしています。
そのうえで、代替案として複雑系理論の活用を提言しています。

以降、様々な歴史や大きな出来事などを踏まえながら、以下のような考察・提言をしています。
(もう少し詳しいレビューは追記をご覧ください)

新古典派経済学そのものの変革

・効率的市場仮説の否定と、代替案としてネットワーク理論の活用の提言
・経済は市場の「見えざる手」で安定しているという思い込みの否定と、代替案として非線形理論・制御理論の活用の提言
・合理的経済人という概念の否定と、エージェントベースモデルのシミュレーションに基づく研究の提言
・主流の経済理論の偏った思考様式の否定と、上記で提言した内容の再提言
・経済は本来的に公平で均衡しているという神話の否定と、公平・均衡を取り戻すある程度の規制の導入の提言
(権力とコネを持つ一握りの個人・組織が、自己利益の追求のために数多くの他者を犠牲にすることを制限する規制)

経済学を取り巻く外部世界との調和

・生態系を無視した経済学の否定と、生態系の一部として経済を位置づけることの提言
(但し、環境経済学は新古典派経済学のうえに成り立っているため問題を抱えているとのこと)
・幸福について誤った定義をしている経済学の否定と、幸福のために社会的規範に経済的規範を従属させることの提言

本書の総括と変革の方向性

・歴史のある時期の特有のイデオロギーである経済学から、21世紀の知識と技術に基づく経済学へ
(ネットワーク理論、複雑系理論、非線形理論といった応用数学の活用)
・経済を惰性的な機械として扱う経済学から、経済を一種の生命体として扱う経済学へ
(モデルも手法も、システム生物学、生態学、医学といった生命科学用に開発されたものを活用)
・バリバリの方程式と数に執着した経済学から、もっと細やかな多面的な進め方ができる経済学へ
・学部内に閉じこもった経済学から、幅広い人々の洞察が利用される経済学へ
(環境保護派、フェミニスト、心理学者、政治学者など)


簡単に要約すると、
新古典派経済学は、経済の実態とは乖離しており役に立たない。そればかりか弊害をももたらす。
従って、経済の実態をより上手く反映できる、経済の外部世界とも調和した複雑系経済学を構築・活用すべきである。
となります。

記憶に新しいリーマンショックに関連した事例を幾つも活用して論じているため、提言に真に迫るものがあると思えました。
また、環境や幸福など最近話題のテーマを経済学と絡めて論じているため、提言が身近に感じられました。


本書で提言された内容や、経済学者でない者が経済学変革の本を出すことに、
不満・怒りを抱く経済学者は少なくないと思います。

しかし、P・F・ドラッカーも言うように、えてしてイノベーションは外側からやってきます。

本書がベストな提言かどうかはわかりませんが、
外側からの提言であっても、経済学者の方々は真剣に検討する必要はあると思います。


なお、本書では複雑系理論の要素が沢山出てきます。
多少なりとも複雑系理論を知らないと訳がわからなくなるかもしれません。
入門レベルの書籍を挙げておきますので、ご参照ください。

今野紀雄『図解雑学 複雑系

更に詳しく知りたい方には、以下もお勧めです。

複雑系:M・ミッチェル・ワールドロップ『複雑系
べき乗則:マーク・ブキャナン『歴史の方程式
ネットワーク理論:アルバート・ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考
エージェントベースモデル:ジョシュア・M・エプステイン&ロバート・アクステル『人工社会

また、複雑系経済学の書籍は1冊しか読んでいませんが、こちらも挙げておきます。

W・ブライアン・アーサー『収益逓増と経路依存

なお、他の書籍(著者・タイトルは忘れましたが)で、
上記著者が経済学の世界では複雑系の考えはほとんど受け入れてもらえない、とコメントしていました。



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経済幻想/エマニュエル・トッド



★★

経済幻想という妄想

経済の世界を人類学的な視点から捉え直すという試みそのものは、経済学の内側からはなかなか発想できないことでしょうから、これについては経済学への新たな切り口の提供という価値を持っています。

また、それらの切り口を踏まえたうえで、資本主義には幾つかのかたちがあり、様々な国において歴史を経てきた家族構成がそのかたちを形成し、それぞれの資本主義の特徴を作り出し、それらの特徴が交差・補完しあうことで世界経済が成り立っている、という説を、著者の得意な領域での統計数値を駆使して導き出していることも価値アリだと思います。


ただ、これらのことと、本書の大半を構成する国家ありきの保護主義の提唱については、基本的につながっておらず、相当の論理飛躍があります。

自由市場貿易は先進国の賃金を低下させ、それによって購買力を低下させ、その結果需要が鈍化・停滞する、また不平等を引き起こすから、保護主義を取るべきだ、としています。
先進国で起きるとしているこれらの事象そのものは実際に起きており、事実ではあるものの、それをもって保護主義を取るべきだというのは、発展途上国の民を無視したまことに自国中心主義のともすれば危険な内容になっています。

また、盲目的にケインズ理論を持ち出し(持ち出す祭には著者の得意とするはずの統計データの駆使は一切ありません)、有効需要を作り出すために保護主義にすべき、と訴えています(ケインズがそのように考えていたのか、一般理論を自説に都合の良いように持ち出しただけなのかは知りませんが)。有効需要を作り出すためには、それこそ著者が人類学の枠内で分析しているように、国民の教育レベルをより高めるという方法を提唱すれば済むことだと思います。

更に、国別の経済力の比較において、アメリカを蹴落とすためとしか思えないような乱暴な統計データの取捨選択をしています。サービス産業は価値がまるでないかのような取扱いです。確かにそのようなもの(医療費が高くても死亡率が下がらなければそれは付加価値ではない、など)はありますが、サービス産業の付加価値の値をゼロとして国家間比較をするのは乱暴以外の何者でもありません。

著者の「帝国以後」もそうでしたが、人類学における統計データを駆使した緻密な分析・理論構成に比べて、経済や政治を述べる際には、それらの姿勢がほとんど見えません。アングロサクソン嫌いの保守派学者だと思われても仕方が無い主張になっています。「世界の多様性」が素晴らしい著作だっただけに残念でなりません。

著者解説(wiki):エマニュエル・トッド

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